20.06.13 update

西城秀樹 青春のアルバム

大学時代に歌った ご機嫌な「恋の爆走」

1978年8月には作詞・阿久悠、作曲・馬飼野康二のコンビによる 「ブルースカイブルー」がリリースされた。11月には第5回となる日本武道館でのリサイタル「永遠の愛7章/西城秀樹」を開催し、「ブルースカイブルー」は、日本レコード大賞金賞、 FNS歌謡祭’78では、初の最優秀歌唱賞に輝いた。

 僕は翌75年の春に大学に進学したが、入部したサークルの宴会で「ローラ」のパフォーマンスを持ちネタにする男がいた。高校時代のサッカー部の宴会で「男の子女の子」のモノマネがウケて以来、僕の十八番は郷ひろみだったのだが、大学のサークルで知り合ったその男が披露する「傷だらけのローラ」は格別だった。レンズの厚い黒縁メガネをかけたカタブツな風体の男がいきなり「ローラ!」と絶叫、乱れていく感じがたまらない。お上品な僕のひろみ芸は一発でぶっとばされ た。

 そんなこともあって、宴会でも秀樹の歌は禁じ手にしていたのだが、サークルが夏に開催するイベントで僕は秀樹の曲を絶唱してしまった。75年の夏、曲はゴキゲンなロックンロール・リズムの「恋の暴走」だ。
 葉山の海岸で催される「キャンプストアー」というイベントなのだが、そこに毒蝮三太夫が司会をする「とびこみ歌合戦」とかいう番組(特番の1コーナーだったかもしれない)がロケでやってきた。街頭でシロートにゲリラ的に歌わせる、まぁいかにも毒蝮さんらしい企画。たまたまその日に参加 していた僕が選ばれたのだが、何故得意の郷ひろみをやめて西城秀樹にトライしたのだろう。〝ローラの男〟への対抗心が疼いたのかもしれない。
 このとき、司会の毒蝮以上に印象に残っているのは、ゲストで山口百恵が入っていたことだ。「夏ひらく青春」を歌ったはずだから、「青い果実」で人気が定着していたとはいえ、まだ桜田淳子より控え目なポジションにいた頃である。暴走するバカ大学生の秀樹芸を、毒蝮の脇で薄ら笑いを浮かべて眺めていた百恵ちゃんの姿が目の奥に 刻まれている。

 そう、この75年の夏場、「あこがれ共同隊」(TBS)というTVドラマで秀樹は桜田淳子と共演していた。もう1人、郷ひろみを加えたアイドル3人を主役にした青春群像劇で、山田パンダが吉田拓郎作曲のテーマ曲を歌うタイトルバックから舞台の原宿、表参道が映し出されていた。滅多に再放送さ れないので確認しようがないけれど、 確かキディランド脇の歩道橋から青山方向を俯瞰した映像だったはずだ。

 
 秀樹の役は脳腫瘍に侵されながらオリンピック(たぶん 76 年のモントリオール五輪だろう)をめざすマラソンランナーで、最後、神宮外苑の絵画館前でふらついて噴水池に入水、桜田に抱きかかえられて息絶える(いや、看取るのは母親の黒柳徹子だったかもし れない)。
 秀樹のドラマといえば、なんといっても「寺内貫太郎一家」だろうが、いま一度観てみたいのはこの「あこがれ共同隊」だ(映像が保存され始めた時代だが、再映できないのは権利関係の問題かもしれない)。

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