鶴巻温泉 元湯 陣屋

 三井財閥の別荘〈平塚園〉として始まった〈陣屋〉の歴史。2018年 は創業百年ということになる。和田義盛公別邸跡に立つ純和風旅館で、 森とも形容できるような一万坪の庭園の中に20の客室が点在する。鶴巻温泉に旅館3軒あるが、源泉があるのはここだけだ。小田急線や東急田園都市線沿線住人の客が多いが、 関東近郊の客にも人気の宿である。

 客の到着は入口の陣太鼓が打たれ、知らされる。両脇の庭の佇まいをながめながら、散歩道を上ると玄関に到着。このアプローチが、さしずめ日常から非日常への渡り廊下であろうか。入口からすぐの右手に〈トトロの楠〉というのが植えられているが、そう、宮崎駿監督は親戚にあたるそうだ。「都心からこんなに 近いところに、しかも駅からすぐのところにこんなすごい旅館があるなんて。ここだと、平日でも仕事を済ませて電車に乗り込み気軽な日常使いで来ることができますね」というジョーさんの言葉通り、それを実践している一仕事終えて一人で訪れるい客も増えているそうだ。

 玄関では四代目女将の宮﨑知子さんが出迎えてくださった。大正の終わりころから旅館としての営業が始まっているが、〈陣屋〉として生ま れ変わったのは昭和になってからだそうだ。館内には代々のご当主が蒐集してきた古美術品や、毛利元就や宮本武蔵ゆかりの武具、上杉謙信の十字の槍なども展示されていて、陣屋百年の歴史の重みを感じさせる。

四代目女将の宮﨑知子さんと。

 また、この宿は、将棋や囲碁の名勝負の舞台としても知られる。対局の場である貴賓室〈松風の間〉は、 明治天皇をお泊めするため黒田藩が大磯に建てたものを移築した総檜露天風呂と贅沢な3間続きの部屋で、欄間には桐や菊の雅な意匠が施され 殿様気分を存分に味わえる。行われたタイトル戦は三百以上で、平成23年の第52期王位戦では羽生善治が王位を獲得し、大山康晴15世名人の不 滅の大記録通算80勝に並ぶという歴史的ドラマがこの部屋で誕生した。 「館内を探訪するだけでも、ある歴史の瞬間に立ち会っているようで、楽しいですね」とジョーさん。

「春は桜、夏には蛍、秋は紅葉なんて、この庭では四季ぞれどれの情感を実感できるんでしょうね。夜の深い緑のしじまに灯される篝火なんてまさに、まさに陣屋の名にぴったりの風景」と庭園をゆっくりと散策したジョーさん。

 平成26年から陣屋の総料理長を務める藤本厚さんに作っていただくのは〈花会席〉のコース。
 前菜は百合根団子、柿に見立てた サーモン&チーズ、鶏の松風など。 やはり酒が欲しくなってくる。薦めていただいたのは、地元秦野の酒〈初陣の誉〉。「さっぱりとした口当たりで、料理にも合いますね」と、ジョーさんはなかなかいける口。お造りは、ホタテと鮪に鯛の昆布〆、八寸は、かます一夜干し、石川芋、海老の湯葉揚げなど。そして里芋と伏見とうがらしのご飯。「土鍋の蓋を開けるとまず香りがひろがります。味つけはさっぱりと上品。すべての料理の食材がよくて新鮮で繊細な味わい。 和食党の僕にとっては、まさにあっぱれと言いたくなるような、和の極みという料理です」と。

 

さらに〈陣屋カレー〉を作っていただいた。元々は賄い料理だったのが対局のときにふるまわれ評判となり、いまや陣屋名物となっている。会席料理と同じ食材を使用する手間暇かけたカレー で、宿泊客のルームサービスとして のみ食べることができる逸品だ。この日は、大きな肉の塊が豊富に入ったビーフカレーだった。
鶴巻温泉は丹沢山塊の地下深くから湧き出る湯で、イオンをたっぷり含み、神経痛、外傷、胃腸病などに効果があるとして、明治時代から多くの人々に親しまれている。

1泊2食付の宿泊料金(1室2名利用の1名料金)は、露天風呂付客室、檜内風呂付客室、スタンダード客室の特選会席プラン35,000円~(離れ貴賓室、貴賓室は60,000円~)、逸品会席プラン39,000円~(64,000円~)、貴賓会席プラン48,000円~(73,000円~)、夢浮橋会席プラン58,000円~(83,000円~)で、宿泊人数や 日にちにより料金が異なる。日帰り入浴はワンドリンク付で2,400円(11:30~15:00、最終受付14:00)、レストランの利用時間は昼11:30~ 14:00L.O.、夜18:00~20:00L.O.で、旬彩御膳4,000円、季節御膳5,000円、花会席6,000 円、桐会席8,000円、特選会席12,000円、逸品 会席16,000円、貴賓会席25,000円、夢浮橋会席 35,000円。表示の価格はすべて税別。

〔住〕秦野市鶴巻北2-8-24 〔問〕0463-77-1300 〔営〕チェックイン15:30、チェックアウト11:00  〔休〕火・水曜

サントリー美術館様
森美術館

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