謎めいた異色の絵本作家、エドワード・ゴーリー(1925~2000)。怖いけれど面白い、世界中に熱狂的なファンやコレクターがいることでも有名だ。独特の韻を踏んだ文章と、独自のモノクローム線画の作品が特徴だ。日本ではゴーリーが亡くなった2000年の秋に、柴田元幸氏の翻訳で初の単行本絵本が刊行されると、若い世代を中心に人気が高まり、近年では『うろんな客』『不幸な子供』などの絵本が次々と紹介されている。
エドワード・ゴーリーは、1925年シカゴ生まれ。父親は新聞記者だった。第二次世界大戦ではアメリカ陸軍で兵役についた経験もある。出版社に就職し本のデザインや装丁を手がけ、53年にデビュー作となる『弦のないハープ またはイアプラス氏小説を書く』を出版した。
絵本以外にも、挿絵、舞台と衣装のデザイン、演劇やバレエのポスターも手がけ多才な才能を発揮した。20代の終わりにニューヨークに移住すると、振付師ジョージ・バランシンの熱狂的なファンになりバランシンのてがけた公演はすべて観賞。70年代にはミュージカル劇『ドラキュラ』では総合デザインを任され、トニー賞の衣装デザイン賞を受賞する。映画は1年間に1000本ほど、サイレント映画『ファントマ』で知られるフランスのフイヤード監督や小津映画がお気に入りで、「源氏物語」から名づけたネコたちと暮らし生涯独身を貫くといった、かなりユニークな人物だったらしい。
晩年には、ボストン近郊の風光明媚な半島、ケープコッドにある築約200年の古い邸宅に移り住み、終の棲家として活動の拠点とした。ここでは象をテーマにした不可思議な版画作品をつくり続け、「エレファント・ハウス(象の家)」という愛称もつけられた。
本展は、「子供」「不思議な生き物」「舞台芸術」「本づくり」をテーマにした約250点の作品で構築される。「ゴーリーハウス」で制作した最晩年の版画作品とともに、同地でのゴーリーの暮らしなども紹介される。
『エドワード・ゴーリーを巡る旅』は、4月8日(土)~6月11日(日)*会期中一部展示替えがある。会場は渋谷区立松濤美術館。月曜休館。HP:https://shoto-museum.jp/