プロマイドで綴る
わが心の昭和アイドル&スター
企画協力・写真提供:マルベル堂
大スター、名俳優ということで語られることがない人たちかもしれないが、
青春の日々に密かに胸をこがし、心をときめかせた私だけのアイドルやスターたちがいる。
今でも当時の映画を観たり、歌声を聴くと、憧れの俳優や歌手たちの面影が浮かび、懐かしい青春の日々がよみがえる。
プロマイドの中で永遠に輝き続ける昭和の〝わが青春のアイドル〟たちよ、今ひとたび。
※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。
小学生の頃、夢中で観ていたテレビドラマに「暗闇五段」がある。多くの漫画家を輩出した伝説的な「トキワ荘」でのリーダー格の漫画家で、『スポーツマン金太郎』や『背番号〇』などスポーツ漫画で人気があった寺田ヒロオが昭和38年から昭和39年にかけて週刊「少年サンデー」で連載していた漫画のテレビドラマ化で、ライバルの策略により、失明の上、記憶喪失となった主人公の柔道の達人を演じていたのが千葉真一だった。確かドラマでは、失明になったのは火事になった家から子供を救出する際の事故が原因だったように記憶する。千葉真一はとにかくカッコよかった。子供たちにとっては、「新 七色仮面」や「アラーの使者」といったヒーロードラマで、おなじみの人気スターだった。
千葉真一の人気を圧倒的なものにしたのは、やはり昭和43年から放送された「キイハンター」だろう。それまでの日本の刑事ドラマになかった規格外れのスケールとセンスで、視聴者を酔わせた。オリンピックを目指した得意の器械体操を活かしたスマートでダイナミックなアクションのカッコよさには、あのブルース・リーまでもが千葉のファンになり、共演を切望していたという。視聴率も30パーセント超えの人気番組だった。この時期、プロマイド俳優部門では4年連続売上1位となり、プロマイド枚数も134枚ある。海外では〝Sonny Chiba(サニーちば)〟の名で知られ、ファンを公認するクエンティン・タランティーノ、キアヌ・リーヴス、ユマ・サーマンらも、「キイハンター」を観ていたらしい。千葉は、その後ジャパン アクション クラブ(JAC)を設立し、真田広之、志穂美悦子らをスターに育て、伊原剛志や堤真一も所属していた。
テレビでの活躍は「キイハンター」だけではない。あまり語られることがないかもしれないが、向田邦子脚本のホームドラマ「七色とんがらし」では亡き父の跡を継ぎ下町の鉄工所を営みながら、親代わりとなり妹や弟を育てる男を演じた。ちなみに東映時代劇の御大・片岡千恵蔵も出演していた。鎌田敏夫脚本のNHKドラマ「十字路」では、草刈正雄とバディを組み全く性格が違う男同士のドラマを楽しそうに演じていたのが印象的だった。「キイハンター」でも時折見せていた千葉のユーモアのあるコメディセンスが光った。倉本聰脚本のスペシャルドラマ「秋のシナリオ」では浅丘ルリ子との初共演が話題になった。深夜のコンビニエンスストアを舞台にした「深夜にようこそ」は脚本家・山田太一の指名を受けての出演で、同じく山田太一脚本の「夢に見た日々」では桃井かおりと共演している。もちろんNHK大河ドラマ「風林火山」で演じた武田四天王の一人、板垣信方役も記憶に残る。
だが、千葉真一の魅力はやはり大きなスクリーンで、輝きを増す。昭和48年の『仁義なき戦い 広島死闘篇』で、千葉が演じた狂犬のようなヤクザは、シリーズの中でも名キャラクターとしてファンが多いだけでなく、俳優たちからも絶賛されている。そして興行収入30億円以上の記録的大ヒットとなった昭和53年の『柳生一族の陰謀』では柳生十兵衛を演じ、その後の『魔界転生』でも同役で緒形拳の宮本武蔵との死闘を演じた。テレビドラマ「柳生あばれ旅」シリーズでも十兵衛を演じており、かつての東映時代劇では近衛十四郎の当たり役だった柳生十兵衛は千葉の当たり役となった。その後も『赤穂城断絶』『里見八犬伝』など、東映の大型時代劇には欠かせない存在だった。
危険なアクションも一切スタントを使うことなく、常により難度の高いアクションを目指し続けスクリーンやテレビで〝不死身の千葉ちゃん〟を見せつけてきたのに、コロナに倒れてしまったのが、いかにも悔しい。現在、映画やテレビドラマで息子の新田真剣佑と眞栄田郷敦が活躍中だが、二人に千葉真一のDNAが引き継がれていることを見届けたい。
文:渋村 徹(フリーエディター)
プロマイドのマルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。2021年には創業100年を迎えた。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。
マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3
あなたが心をときめかせ、夢中になった、プロマイドを買うほどに熱中した昭和の俳優や歌手を教えてください。コメントを添えていただけますと嬉しいです。もちろん、ここでご紹介するスターたちに対するコメントも大歓迎です。