人生百年時代――とはいえ、老いさらばえて100歳を迎えたくはない。
健康で生気みなぎるような日々を過ごせてこそ、ナイス・エイジングだ!
西洋医学だけでなく東洋医学、ホメオパシー、代替医療まで、
人間を丸ごととらえるホリスティック医学でガン治療を諦めない医師、
帯津良一の養生訓は、「こころの深奥に〝ときめき〟あれ」と説く。
帯津良一・85歳のときめき健康法
文=帯津良一
物資が窮乏を極めた太平洋戦争の終戦直後、書店店頭に最初に現れたのは野村胡堂(1882~1963)の『銭形平次捕物控』と佐々木味津三(1896~1934)の『右門捕物帖』であった。状況が緊迫すればするほど本性が現われると考えるならば、サスペンス好きは人間の本性なのだろう。
アルフレッド・ヒッチコックの映画が好かれるわけである。なかでも好きなのが、『北北西に進路を取れ』(1959年)である。主役はケーリー・グラントにエヴァ・マリー・セイント。悪役にジェームズ・メイソンとマーティン・ランドー。主役のケーリー・グラントは知性に男のやさしさ、それに芯の強さが加わって、この手の役回りにはぴったりだ。
実際、『泥棒成金』(監督A・ヒッチコック 共演グレイス・ケリー、1955年)および、『シャレード』(監督スタンリー・ドーネン 共演オードリー・ヘプバーン 1963年)でも好演している。
謎の女を演ずるエヴァ・マリー・セイントがまたいい。作家の半村良さんがどこかに、
「男は謎めいたところがあったほうがいい」と書いたが、謎めいた女も悪くない。妙な色気があるのだ。どんな素性の女かと思ってしらべてみておどろいた。
『波止場』(監督エリア・カザン 1954年)にマーロン・ブランドの相手役として映画初出演を果たした上に、なんとアカデミー助演女優賞の栄誉に輝いているのだ。やはり只者ではなかったのだ。
さらに、ヒッチ・サスペンスで忘れられない作品に『裏窓』(共演グレイス・ケリー 1954年)と、『知りすぎていた男』(共演ドリス・デイ 1956年)がある。どちらも主演はジェームス・スチュアート。これがまた、ケーリー・グラントと同じく知性に男のやさしさの上に芯の強さを伴った男なのである。どうやらこの手の男がヒッチ好みなのだろう。
こうして、ヒッチ・サスペンスのあれこれに思いを馳せていると、肝腎のヒッチ監督の晩年が気になってくる。幸せな後半生を送ってくれたろうか。まずは没年をしらべてみる。数え年で82歳だ。うん、当時としては十分生きている、大丈夫だ!
ケーリー・グランドはどうだ、うん、83歳。ジェームス・スチュアートは90歳。やはりいい仕事をした人は幸せな後半生を手にすることができるのだ。エヴァは? なんと97歳でまだ存命中である。やはり謎の女だ。こちらまで幸せになってくるというものだ。
おびつ りょういち
1936年埼玉県川越市生まれ。東京大学医学部卒業、医学博士。東京大学医学部第三外科に入局し、その後、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。そして2004年には、池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設現在に至る。日本ホリスティック医学協会名誉会長、日本ホメオパシー医学会理事長著書も「代替療法はなぜ効くのか?」「健康問答」「ホリスティック養生訓」など多数あり。その数は100冊を超える。現在も全国で講演活動を行っている。講演スケジュールなどは、https://www.obitsusankei.or.jp/をご覧ください。