(WEB版 新・日日是好日) ②
西洋医学だけでなく東洋医学、ホメオパシー、代替医療まで人間を丸ごととらえる日本のホリスティック医学の提唱者であり第一人者。雑誌¿Como le va?には通算37回の健康エッセイを連載していただいている。
7月まですべてキャンセルになった講演が8月に入って一気に復活した。それもいきなり7回ときたものである。このダイナミズムや好し! とばかりにうれしかった。しかも、私にとっては老舗ともいうべき、古い古いお付き合いの朝日カルチャーセンターと東京療術学院が先陣争いというのだから尚更であった。
昨日、たまたま小林秀雄さんの『私の人生観』なる著書を読んでいたところ、冒頭に、
――どうも私は講演というのもを好まない。
とあるではないか。講演の復活に酔い痴(し)れている私にとっては出ばなををくじかれた感が無きにしもあらずであったが、小林秀雄さんの立場を考えればわからないことでもない。あれほどの知性ともなると、喋ることでは書くことによる深みには到達できないということなのではないだろうか。
そこへいくと、私ぐらいの低レベルでは書くことも嫌いではないし心のときめきをもたらせてくれるものでもあるが、心の躍動感ということになると喋る方が上かもしれない。8月中旬の午前と午後のダブルヘッダーの日のことを報告したい。
いつもホテルに前泊して、恒例の生ビール、フレッシュオレンジジュース、目玉焼き一ケの朝食を済ませて、日本橋の会場へ。10時から1時間20分の講演。主催は日本健康機構。年に一回だが、こことのお付き合いも長い。
与えられた演題は
「人はなぜ治るのか」
なんだ、アメリカの統合医学のオピニオンリーダー、アンドルー・ワイル博士の本の題名ではないか。まずは懐かしさが込み上げてくる。かつてはよく付き合っていた。彼の『統合医学』なる雑誌の発刊記念パーティに出席するためにニューヨークまで一泊で往復した日のことが鮮やかに蘇って来る。
神楽坂の洒落たお店で生ビールに玉子丼の昼食をとってから信濃町の会場へ。こちらは村松大輔さんとの共著である
『波動とエネルギーのレシピ』
の出版記念会である。主催は村松さんで、私は当事者の一人といったところ。二人で30分ずつの講演と30分の対談。
いま流行のオンラインとかで会場には20人ほどの出席者。「スリムクラブ」なる漫才師さんが賛助出演して会場を湧かせたものである。その漫才師さんたちが私の話に腹を抱えて大笑いしてくれたと思ったら、終ってからの懇親会の席上、
「先生のお話はじつに面白かった。一度、私たちとトリオを組んでみませんか」
ときたものである。プロに認められたのである。なんであれ最高のダイナミズムではないか。
photo by Gombi
おびつ りょういち
帯津三敬病院名誉院長。日 本ホリスティック医学協会名誉会長。1936年埼玉県生まれ。 61年東京大学医学部卒業。 東京大学医学部第三外科医局長、都立駒込病院外科医長などを経て、82年帯津三敬病院を開設し院長。