20.08.05 update

コロナ禍の中、下高井戸シネマは、地元の人々の映画愛に支えられた

クラウドファンディングに寄せられた大きな支援

――クラウドファンディングを立ち上げられましたね。

木下 休館の少し前に立ち上げたんですが、下高井戸シネマがつぶれそうだという印象を世間に与えてしまうのではないかとか、つぶれそうな映画館には映画を貸せないだとか、という状況になりうることを危惧して、実は社内ではあまり歓迎されていない状況の中で、独断で立ち上げたんです。言ってみれば自社の経営不振を大っぴらに世間に披露することになるわけですものね。嬉しいことにこんなにと思うほど支援してくださる方がたくさんいらして、最終的に2か月で1700名の方々が支援してくださったのですが、そういう方々への対応を休館中に一人でやっていました。立ち上げてはみたものの、ほかのスタッフ同様、正直集まるわけがないと私自身も期待していなくて、10人でも寄付してくださる方がいればいいと思っていたのが、1700人と想像をはるかに超える支援者の方たちがいて、約580万円集まりました。

――多くの支援を得られて何を感じられましたか。

木下 なにより、下高井戸シネマを愛してくださる、応援してくださる人たちがこんなにもいらっしゃるということが実感できたという、どんなに言葉を尽くしても足りない、最高の幸せを味わわせていただきました。そして、映画が人々の心を潤わせる、なくてはならない文化であること、映画館が、人々にとってどれだけ大切な場所なのかということを知り得て、映画文化に携わる人間としてこんなに豊かな気持になれたことに感謝しています。寄付に添えてメッセージも寄せてくださって、大いに励みになりました。ご自身と下高井戸シネマとの懐かしいエピソードをはじめ、そのメッセージ一つひとつにショートムービーができそうなドラマがあって、映画が人の人生に寄り添う文化であるということを再認識しました。特に私の心に響いたのが、「父がこの映画館が好きで会員でした。今は私が受け継いで会員になっています」という女性がいらして、私が父から映画館を受け継いだことと重なって、お客様にとっても映画館の人間にとっても、映画と映画館が世代を超えて下高井戸の街で受け継がれているというのが嬉しかったです。クラウドファンディングを通して、お客様たちそれぞれと会話ができたような気がしています。昨年、この仕事を継いだばかりで、想像を絶する災厄に見舞われたわけですが、父から受け継いだ映画館が、こんなに人々に愛されている映画館だった、ということを知ることができ、仕事を継いだことの喜びをこんな短期間で味わわせてもらいました。

<新型コロナウイルス感染予防対策について>
◎座席は1席ずつ間隔をあけ、全64席で販売します。
◎館内ではマスクを必ずご着用ください。
◎発熱や咳など、体調のすぐれない方はご来館をお控えください。

1 2 3

新着記事

  • 2025.04.25
    【お出かけ情報】どこまでも続く青の絶景!国営ひたち...

    春のネモフィラが満開!

  • 2025.04.25
    【耳より情報】いっそうサステナブルになって登場!マ...

    サスティナブルな熟睡マットレス

  • 2025.04.24
    『The Taste of Nature Ⅱ 幻の...

    応募〆切:5月16日(金)

  • 2025.04.24
    フランス映画の巨匠フランソワ・オゾン監督の新作『秋...

    応募〆切:5月16日(金)

  • 2025.04.24
    グループ・サウンズ全盛の1967年、女性ソロ・シン...

    中村晃子「虹色の湖」

  • 2025.04.23
    総製作期間22年、世界が新作を熱望する名匠ジャ・ジ...

    応募〆切:5月7日(水)

  • 2025.04.23
    METライブビューイング《フィガロの結婚》スペシャ...

    応募〆切:5月22日(木)

  • 2025.04.22
    工場の食品廃棄物をエネルギーに!CO2排出量実質ゼ...

    CO2排出量実質ゼロへ

  • 2025.04.22
    昭和グラフィックが現代アートに与えた衝撃が見えてく...

    4月25日(金)~5月11日(日)

  • 2025.04.22
    NHK朝ドラ「あんぱん」のモデル、やなせたかしの〝...

    今夏5カ所で開催

映画は死なず

特集 special feature  »

<特集>今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が語る「三屋清左衛門残日録」~時代劇にはまだまだ未来がある~

特集 <特集>今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が...

藤沢周平原作時代劇「三屋清左衛門残目録」の章

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!