〝彫刻の寺〟帝釈堂にはアートがある
柴又帝釈天は、「彫刻の寺」という異名も持つほど、二天門をはじめ境内のお堂は彫刻で飾られている。とくに帝釈堂内陣の外側にある10枚の胴羽目彫刻は、法華経に説かれる代表的な説話を選び、大正11年(1922)から昭和9年(1934)にわたり制作されたものだ。
胴羽目彫刻は大正11年に加藤寅之助が「法師守護の図」を完成させ、残りの9枚を東京在住の彫刻師に依頼することが決まった。ところが翌年の大正12年に関東大震災に遭い、彫刻材が焼失するという被害に見舞われた。そこで改めて全国から彫刻材を求め、昭和元年から彫刻工事が始められたのである。
彫刻師それぞれが、厚さ約21センチ、縦127センチ、横227センチの欅板に彫った胴羽目彫刻は、実に緻密で、法華経の経典を知らなくても、ストーリーに惹き込まれ、見ているとつい手を合わせたくなる。寸分違わない立体感が表現され、往時の彫刻師たちのプロとしての矜持が胸に迫ってくるのだ。
帝釈堂は長年吹き曝しだったが、平成3年には彫刻を保護するため、ガラスで覆うようになり、見学者用の通路が設けられて「彫刻ギャラリー」として一般公開されている。(大客殿、庭園、彫刻ギャラリーは有料)
400年に及ぶ柴又帝釈天題経寺は、年月を重ねるごとに施設も整い、建築物としても興味深く、宗派に限らず多くの人々を楽しませてくれる寺として、葛飾柴又の文化の一翼を担っている。
帝釈天題経寺
東京都指定名勝「邃渓園」
入園料:庭園、彫刻ギャラリー共通 大人400円、子供(小・中学生)200円
開園時間:9:00~16:00
休園日:12月28日~1月3日(庭園のみ休園)
住所:葛飾区柴又7-10-3
次回は、葛飾柴又の「寅さん記念館」などを中心にお伝えする。