インタビューや映画のトークショーなどで面識のあるお二人だが、“天下の美女”にして大女優の山本富士子さんと並んでの表紙撮影とあって、少年のようにはにかみを見せる川本三郎さん。これは映画の評論も手がける川本さんが、日本映画界における「女優・山本富士子」の存在がいかに大きいかを熟知しているからに違いない。さらに山本さんが川本さんの著作『いまも、君を想う』『マイ・バック・ページ』などを読んでいらっしゃると知り、恐縮するばかり。それでも撮影の合い間には山本さんがご一緒した市川崑監督や小津安二郎監督とのエピソードや当時の映画談議に花が咲き、なんともなごやかなムード。現在の山本さんのお仕事に朗読公演があると聞き、「永井荷風の『濹東綺譚』をぜひやっていただきたい」とリクエストする一幕も。
撮影協力:ホテルニューオータニ
撮影:渞 忠之
やまもと ふじこ
1931年、大阪生まれ。50年、18歳のとき読売新聞社主催第一回ミス日本に選ばれ、翌51年には日米親善使節として渡米。53年大映入社、映画『花の講道館』で女優デビュー、以降日本映画黄金期に大女優ととなった後は活躍の場をテレビ、舞台に移し数多くの作品に出演。映画『夜の河』でNHK 最優秀主演女優賞、『彼岸花』『白鷺』でブルーリボン主演女優賞、『濹東綺譚』『女経』でキネマ旬報主演女優賞、テレビ山本富士子アワー「にごりえ」で第一回ギャラクシー賞、舞台成果に対して松尾芸能大賞など数多くの受賞歴がある。代表作に映画『湯島の白梅』『暗夜行路』『私は二歳』『黒い十人の女』、テレビドラマ「明治の女」「春琴抄」「時雨の記」、舞台『吉野太夫の恋』『静御前』『舞化粧』『おさんさま』『湯島の白梅』『春琴抄』『乱舞』『序の舞』『雁金屋草紙』、朗読公演『日本の心、雨情のこころ』『古賀政男“ 我が心の歌”』など多数の出演作がある。また著書に『いのち燃やして』がある。2001 年紫綬褒章受章。
かわもと さぶろう
評論家( 映画・文学・都市)。1944 年生まれ。東京大学法学部卒業。「週刊朝日」「朝日ジャーナル」を経てフリーの文筆家となりさまざまなジャンルでの新聞、雑誌で連載を持つ。『大正幻影』(サントリー学芸賞)、『荷風と東京『断腸亭日乗』私註』(読売文学賞)、『林芙美子の昭和』(毎日出版文化賞、桑原武夫学芸賞)、『映画の昭和雑貨店』(全5 冊)『映画を見ればわかること』『向田邦子と昭和の東京』『いまも、君を想う』『マイ・バック・ページ ある60 年代の物語』『それぞれの東京 昭和の町に生きた作家たち』『銀幕の銀座 懐かしの風景とスターたち』『小説を、映画を、鉄道が走る』(交通図書賞)『君のいない食卓』『白秋望景』(伊藤整文学賞)『いまむかし東京町歩き』『美女ありき―懐かしの外国映画女優讃』『そして、人生はつづく』『映画は呼んでいる』『ギャバンの帽子、アルヌールのコート:懐かしのヨーロッパ映画』『わが恋せし女優たち』(逢坂剛氏との共著)など多数の著書がある。