20.12.27 update

若尾文子さんへ─ぼくは、その時「恋」に落ちた。 


増村保造監督とは20 作ほどご一緒しました。イタリアに映画留学をなさったからでしょうか、大胆でモダンな演出をなさる監督で。私が演じた女たちは近代的な人間として描かれたと思います。

強さと可愛らしさとの奇跡的なバランス

 若尾さんは、とても不思議な人です。
 簡単に言うと、強さと、可愛らしさのバランスが奇跡的にうまく配合されているとでもいうのでしょうか。
 そして、それが、おそらくまったく意識されないでおこなわれている。
 嫌なものは嫌、したくないことはしたくないという、くっきりとした部分と、少女みたいに天然なほんわかした部分。
 自己管理をもの凄くしっかりされているところと、意外と子供みたいにちょっと駄目な行動をしてしまうところ。
 それでいて、ブレのようなものがない。
 時代とかそういうものを越えて、自分の時間の流れで生きていらっしゃる感じ。
 自然なようでいて、ご自身の物差しですべて判断されている感じ。人の目や、つまらない「普通」にしばられることなく。
 だから、男性は恋をするし、女性は憧れるのだろうと思います。
 私の「恋」も長いお仕事を終えても、ずっと続いています。
 ずっと続いていくのだろうなと思います。
 今度、お仕事ご一緒に出来るのはいつだろうか? 今はその出番待ちの状態。
 出来れば、テレビドラマで、若尾さんの恋愛ドラマを書いてみたい。
 それが実現するまで、ずっと片思いさせていただきたいと思います。


岡田惠和さん脚本のNHKの連続テレビ小説「おひさま」でヒロインの現在を演じ、ナレーションを担当した若尾文子さん。第一話の冒頭から登場する大切な役どころで、激動の時代を持ち前の明るさで周囲の人たちを〝おひさま〟のように元気づけてきたヒロインの現在の姿、それは若尾文子さん以外に想像できなかったという岡田さん。この日は久しぶりの再会で、しばし「おひさま」談義や若尾さん出演のコマーシャルの話で盛り上がった。「CMでアルトサックスを持つ若尾さんカッコよかったですね」という岡田さんに「きょうのヘアスタイルはあのときのイメージなの。でも友だちからは、あなた犬のお母さん役なのよねって」とチャーミングに微笑む若尾さん。
岡田惠和

若尾文子(わかおあやこ)
女優。1952 年『死の町を脱れて』で銀幕デビュー以来、大映のトップ女優として活躍。61 年、65 年、68年にキネマ旬報主演女優賞を、61 年と65 年にブルーリボン主演女優賞を受賞。大映倒産後は舞台やテレビを中心に活躍し数多くの話題作に出演している。映画『祇園囃子』『赤線地帯』『処刑の部屋』『日本橋』『朱雀門』『永すぎた春』『青空娘』『浮草』『初春狸御殿』『からっ風野郎』『ぼんち』『婚期』『好色一代男』『女の勲章』『女は二度生まれる』『妻は告白する』『雁の寺』『しとやかな獣』『女系家族』『越前竹人形』『「女の小箱」より 夫が見た』『卍』『花実のない森』『波影』『清作の妻』『妻の日の愛のかたみに』『刺青』『氷点』『妻二人』『砂糖菓子が壊れるとき』『華岡青洲の妻』『積木の箱』『濡れた二人』『不信のとき』『千羽鶴』『座頭市と用心棒』『男はつらいよ 純情篇』『竹取物語』『春の雪』、舞台『雪国』『桐の花咲く』『女橋』『喜和』『忍ぶ川』『妻たちの鹿鳴館』『ウエストサイド・ワルツ』『華々しき一族』『女の人さし指』、テレビ「クラクラ日記」「どっきり花嫁」「きんきらきん」「罪な女」「戦国艶物語」「ふたりぼっち」「こけこっこー!」「ちん・とん・しゃん」「新・平家物語」「おはよう」「赤ひげ」「秋の蛍」「別れの午後」「冬の花・悠子」「女の気持」「元禄太平記」「寿の日」「あなただけ今晩は」「櫂」「女の足音」「冬の虹」「女の河」「午後の恋人」「午後の旅立ち」「戦国の女たち」「花の影」「鹿鳴館物語」「武田信玄」「春燈」「三姉妹」「源氏物語」「迷走地図」「徳川慶喜」「武蔵 MUSASHI」「初蕾」「結婚」「おひさま」など多数の出演作がある。

岡田惠和(おかだ よしかず)
脚本家。1959 年東京生まれ。90 年にテレビ「香港から来た女」で脚本家デビュー。99 年に「彼女たちの時代」で芸術選奨新人賞放送部門受賞、01 年にはNHK連続テレビ小説「ちゅらさん」で向田邦子賞、橋田賞を受賞。テレビ「白鳥麗子でございます」「じゃじゃ馬ならし」「若者のすべて」「輝く季節の中で」「イグアナの娘」「ドク」「ビーチボーイズ」「君の手がささやいている」「ランデヴー」「鯨を見た日」「天気予報の恋人」「アンティーク~西洋骨董洋菓子店」日韓共同制作ドラマ「フレンズ」「夢のカリフォルニア」「恋セヨ乙女」「アルジャーノンに花束を」「ホームドラマ」「マザー&ラヴァー」「バンビ~ノ!」「めぞん一刻」「銭ゲバ」「天国で君に逢えたら」「小公女セイラ」「Wの悲劇」「おひさま」「造花の蜜」「最後から二番目の恋」、映画『ときめきメモリアル』『スペーストラベラーズ』『いま、会いにゆきます』『天国は待ってくれる』『おっぱいバレー』『阪急電車 片道15 分の奇跡』など多数の脚本を手がけている。小説に『天国は待ってくれる』がある。

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