さらにそこに暮らすことで人々が健康になれる街を目指し、慶應義塾大学の予防医療センターが「麻布台ヒルズ」内に拡張移転し、疾患を早期に発見し、リスクに応じた予防医学を展開する。
国際都市競争に勝ち抜くためには、才能ある人々が集まる魅力的な都市でなければならない。そのためにも外国人ビジネスワーカーやその家族も暮らしやすい環境づくりが大切だが、「麻布台ヒルズ」内には都心最大級のインターナショナルスクール「ブリティッシュ・スクール・イン 東京」も開校する。60ケ国以上の国籍の生徒が在籍し、国際色豊かな環境で学ぶ子どもたちの成長が楽しみだ。
また、森ビルとチームラボが共同で手掛けたお台場「森ビルデジタルアートミュージアム:エプソンチームラボボーダレス」が、24年1月「麻布台ヒルズ」に移転オープンする。お台場でも年間230万人の来館者数を誇り、訪日外国人の割合が半分を超えるという世界に類のないアートミュージアムは、人気のスポットになるに違いない。アートといえば、「麻布台ヒルズギャラリー」が虎ノ門・麻布台エリアの文化発信の中核となり、開業と同時に、「麻布台ヒルズ」のパブリックアートも手掛け、環境問題にも積極的に取り組むアーティストのオラファー・エリアソン氏による展覧会が予定されている。
商業施設もファッション、フード、ビューティー、カルチャー、アート、ウェルネスなどラグジュアリーブランドをはじめとする約150店舗が出店する。ベンチャーキャピタル約70社が集結する「Tokyo Venture Capital Hub」、中央広場の地下には「麻布台ヒルズマーケット」が誕生し、生鮮、総菜、スイーツ、ベーカリーなど31の店舗が集まる。そして世界初となるアマンの姉妹ブランドホテル「ジャヌ東京」も順次開業する。
環境への取り組みにも触れておくと、街全体で雨水や雑排水を再利用し、街で使われる電気はすべて再生可能エネルギーだ。東日本大震災レベルの地震に対しても、生活や事業を継続できる耐震性能を備えており、電力の供給、帰宅困難者の受け入れのスペースも確保している。自然災害が多い日本で安心して働くことができる、住むことができるという要素は、外資系企業の誘致にも大きなポイントだろう。
森ビル前社長の森稔氏は、東京の成長なくして日本の繁栄はあり得ないという信念を貫いた。「都市政策こそ成長戦略の要」であると、森ビルはこれまでに「アークヒルズ」「六本木ヒルズ」「表参道ヒルズ」「虎ノ門ヒルズ」の再開発を手掛けてきた。1967年、創業者の森泰吉郎社長ほか再開発組合員とともに始めた溜池から六本木にまたがる5.6haの再開発は、開業まで約20年の歳月をかけ、「アークヒルズ」が生まれた。開業後も街づくりに取り組み、サントリーホールを中心に周辺エリアの大使館や美術館、飲食店が一体になって行う秋の音楽祭はすでに恒例となっている。毎週土曜日、アーク・カラヤン広場では「ヒルズマルシェ」が開催され、生産者と消費者を結ぶ取り組みが続いている。「六本木ヒルズ」では、屋上の田植えや今年18回目となる盆踊大会、冬のイルミネーション、と工夫を凝らして賑わいを見せている。単に箱モノだけを造って終わりにするのではない、街に住む人と訪れる人のコミュニティで出来上がる「街づくり」を推進してきた。それゆえ、街は進化し、いつ訪れても新鮮な感動があるのだろう。
「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街」としてお目見えする「麻布台ヒルズ」はこれからどんな街になっていくのだろうか。これまで森ビルが培ってきた街づくり、賑わいづくりのすべてのノウハウを注ぎ込み、人々がより人間らしく生きられる都市をめざした「麻布台ヒルズ」の開業の11月24日が待ち遠しい。