23.09.14 update

古田新太×早乙女太一・友貴兄弟共演最新作〝いのうえ歌舞伎〟を歌舞伎町で上演! いのうえ歌舞伎『天號星(てんごうせい)』

 新宿・歌舞伎町、新宿コマ劇場の地下にあったシアターアプルで、〝いのうえ歌舞伎〟『髑髏城の七人』が上演されたのは1991年のことだった。そこから17年後の2008年、天下の商業演劇の殿堂・新宿コマ劇場で『五右衛門ロック』の1か月公演を敢行するも、その年の終わりにコマ劇場は長い歴史に幕を閉じた。それから15年後の2023年、再び歌舞伎町のど真ん中に新劇場<THEATER MILANO-Za>が誕生した。ならば、〝いざ歌舞伎町〟とばかりに、新宿に根付いた劇団✩新感線が、最新作の王道〝いのうえ歌舞伎〟を歌舞伎町のど真ん中で上演中だ。
 9月14日に初演を迎えた上演作品は『天號星』。元禄時代の江戸の町で裏稼業に生きる人々の人情劇を、作者の中島かずきが〝あっ〟と驚く<入れ替わり>の物語で魅せる。そして主宰・いのうえひでのりによる、ケレン味たっぷりの王道〝いのうえ歌舞伎〟に、江戸情緒が香る〝池波正太郎〟エッセンスが加わり、これまでの〝いのうえ歌舞伎〟とは一味違う、新感線流時代活劇を誕生させた。

撮影:田中亜紀

 世のため人のため、生きていてはならない輩に引導を渡す、引導屋の主人・藤壺屋半兵衛を演じるのは、劇団✩新感線の看板俳優・古田新太。その半兵衛とひょんなことから中身が入れ替わってしまう冷酷無比なはぐれ殺し屋・宵闇銀次を演じるのは、今作で新感線7回目の出演となる早乙女太一。そして、銀次の宿敵で荒くれ者の人斬り朝吉を演じるのは、新感線5回目の出演となる早乙女友貴。もはや準劇団員といっても過言ではない2人だが、古田との共演は、太一が19年の『けむりの軍団』以来、友貴が22年の『薔薇とサムライ 2』以来で、兄弟揃って古田と共演するのは今回が初!となる。

撮影:田中亜紀

 中島かずきは、「古田と太一の人格入れ替わりが一番の見せ場となるだろう。太一が、斬って斬って斬りまくる役を以前からやってみたかった」と言えば、演出のいのうえひでのりは、「久しぶりにいろんな趣向のチャンバラを見せることができるだろう。入れ替わりのドタバタとスリリングが見せ場の一つ」そして、「昔と違うのは、やみくもに戦うのではなく、我々もキャリアを重ねてちゃんと意味のある立ち回りを作れていると思います」と作品を紹介する。

 子供の頃からのあこがれの場所だった新感線の舞台で、古田の殺陣を色っぽいと感じていたという早乙女太一は、「久しぶりの新感線の舞台で、今回はそろそろ古田さんをしとめるときかなと思っている」と言えば、弟の友貴は「前回は古田さんと戦えなかったのですが、今回やっと古田さんと刃を交えることができるのが楽しみ」と抱負を語っていた。兄弟での共演は所属する大衆演劇「劇団朱雀」以来、9年ぶりということだが、兄弟での殺陣は、気を遣うこともなく、本当にあたることもあるという。それだけ、互いを知り尽くし信頼しあい、呼吸をつかみきっている証だろう。

撮影:田中亜紀

 共演は、NHK大河ドラマ「どうする家康」の五徳役や舞台『夜は短し歩けよ乙女』などで注目されている乃木坂46のメンバーの久保史緒里。幼少期から中国武術に親しみ、数々の作品で度肝を抜くアクションを披露し、次世代を担うアクション俳優として注目を集めている山本千尋。本年の舞台『新ハムレット』でも、観客を惹きつけて離さない自在な演技が注目され、本作が14作目の参加となる新感線最多の出演歴を誇る池田成志。そして高田聖子、粟根まことを始めとする平均年齢50代のお馴染み劇団員たちも揃い踏み。久保と山本は、共に新感線の舞台に初参加で、「今まで観客として生命の原動力をもらえていた舞台に参加できるのが楽しみ」「上京して初めて観た舞台である新感線の舞台にいつか出てみたいと思っていた夢がやっと実現できたという万感の思い」と、それぞれに初参加の喜びを語っていた。演出のいのうえは、「久保さんは、ゴシックメタル調の曲を歌うんだけど、彼女の持つアイドルの雰囲気が相まって凄く良いです」「山本さんは、昨年の大河ドラマで披露したアクションで期待が膨らむと思いますが、そこにはバッチリ応えて誰よりも一番戦ってくれています」と初参加の2人を讃える。

撮影:田中亜紀
撮影:田中亜紀

 早乙女太一が、「今回の劇場は舞台と客席との距離が近く、こんなに間近で新感線の舞台を感じられるのも滅多にないと思います」と言えば、友貴も「本格時代劇なのでカッコいい要素はもちろんあるけれども、ちゃんとふざけて遊んでいる。その真剣さと軽妙さの絶妙なバランスが新感線の楽しいところ」と、本作の魅力を語る。そして、いのうえひでのりは、「この作品はテレビ時代劇へのオマージュ度が高く、いろんな要素がたくさん出てきます。時代劇のセオリーに則った芝居をきっちり届けたいです」と。

1 2

映画は死なず

新着記事

  • 2024.07.27
    泉屋博古館東京「昭和モダーン モザイクのいろどり ...

    応募〆切:8月27日(火)

  • 2024.07.25
    3度目の挑戦で俳優座養成所に合格した田中邦衛は、『...

    大きな垂れ目と、巻き舌の話し方が独特だった

  • 2024.07.25
    夜明けのコーヒー、二人で飲もう…夏が来ると思い出す...

    作詞・岩谷時子、作曲・いずみたくの名曲

  • 2024.07.22
    昭和39年、純愛ドラマの先駆けとなった東芝日曜劇場...

    純愛ドラマ「愛と死をみつめて」のミコ役でトップ・スター

  • 2024.07.18
    ちあきなおみ版が複数のCMに起用されスタンダード・...

    永六輔と中村八大の「六・八コンビ」による〝黒い〟シリーズ第2弾

  • 2024.07.17
    老いが追いかけてくる ─萩原 朔美の日々   

    第19回 キジュからの現場報告

  • 2024.07.17
    [ロマンスカーミュージアム]の夏休みイベントは親子...

    7月17日(水)から

  • 2024.07.17
    <自然災害から身を守るPart2> 大型台風、暴風...

    大型台風、暴風の季節に備えて

  • 2024.07.16
    世界中の映画祭を席巻した、メキシコの新鋭監督の『夏...

    応募〆切:8月4日(日)

  • 2024.07.16
    山梨県立文学館開館35周年の特設展は「文学はおいし...

    7月13日(土)~8月25日(日)

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!