また、受け入れる側のホテルや交通機関に従事する人たちに向けた講演会も開催しました。車いすトラベラーの三代達也さんは、18歳の頃バイク事故で脊髄を損傷し、両手両足に麻痺が残り車いす生活になりましたが、23歳の時にハワイに一人旅を経験し、日本よりはるかに進んだバリアフリーに触れ、世界観が広がり29歳で世界一周をした強者です。彼の話は聴講者にも大変興味深い内容でした。
このような取り組みを「箱根町のストーリー モビリティの課題を克服する」と題し、グリーン・デスティネーションズに詳細なレポートにして提出しました。評価の対象は、サスティナブル・デスティネーションとして国際基準100項目から15項目以上を満たすことが条件で、地域の持つ価値をストーリーとして提示することが求められます。これらをクリアできて「持続可能な観光地」としてエントリーされるのです。2023年10月の発表で、日本では岩手県釜石市、香川県丸亀市、鹿児島県与論島などとともに10地域が選ばれ、その後箱根町は3位に入賞したとの知らせがありました。そして今年の3月ベルリンでの授賞式で、「ビジネスとマーケティング部門」で1位に輝いたのです。
観光客に優しい町は、住民にも優しい
身体が不自由で温泉に入ることができない家族がいれば、旅行に行きたくても出かけることをためらってしまいます。そこで「箱根DMO」では、まったく新たな取り組みとして入浴介助のマッチングシステム作りを進めています。プロの介護士から講義と実技で入浴介助を学び、認定書を出します。看護師と二人一組になって、要請があればその場所(ホテル旅館など)に出かけて入浴介助を行う。今は、箱根の温泉旅館で入浴介助ができるとは誰も思っていませんから、その要請もありませんが、「箱根に行きたいけれど無理でしょう」と諦めてしまっている人はきっと多いはずです。介護する側も、される側も旅行に行くという目標は、日々の励みになることでしょう。あと2年半の任期の中で完全なシステム化を成し遂げたいと思っています。
箱根湯本の駅で、車いすの後ろポケットに冊子を携えていた人を実際に見かけた時は本当に嬉しかったです。車いすトラベラーが箱根ロープウェイに乗ったところを動画でSNSに載せ、再生回数も格段に伸びたという結果も出ています。バリアフリーが進んでいる町は、住民にとっても住みやすい町であると言えます。観光客にとって優しい町は、住民にも優しい。結果、町から住民の流出が防ぐことができ、町も活性化することでしょう。(談)
佐藤正毅(さとう まさき)
1983年生まれ。ホテル業界で勤務の後、楽天グループ株式会社で、伊豆箱根地区の営業を担当。2021年4月より、「箱根DMO」戦略推進部マネージャーとして勤務。
箱根DMO
[住]神奈川県足柄下郡箱根町湯本256
[問]0460-85-5443