特別展「<女優>から<妻>へ ─生誕100年 高峰秀子という生き方」が、10月5日(土)より鎌倉市川喜多映画記念館で開催されている。会期は、2025年1月13日(月・祝)まで。
高峰秀子(1924~2010)は5歳で松竹映画『母』でデビューすると天才子役の名を欲しいままに、〝デコちゃん〟の愛称で親しまれた。娘役から三十路を経ても独特な知性と感性から、不思議な色気がにじみ出る女優として、戦前戦後を通し長い間あらゆる世代に愛されてきた。いっぽうでは、養母との確執や十数人の親族を養わなければならないなど、過酷な運命を背負わされていたのである。仕様がなしに女優を業(なりわい)としていたが、『カルメン故郷に帰る』(木下惠介、1951)を機にフリーになると、あらゆるしがらみから逃れ、パリでの生活で自分を取り戻した。そして55年に木下の助監督だった松山善三と結婚すると、「松山の妻」として自らの人生を歩き始めたのである。
引退作と考えられていた『浮雲』(成瀬巳喜男・1955)以降は、木下・成瀬を中心に出演作を絞り、シナリオ・監督業に進出した夫・松山を支えながら、妻として女優として充実した日々を送った。1979年、木下監督の『衝動殺人 息子よ』に出演予定であった八千草薫が降板し、代役を依頼され出演するがこれが最後の映画出演になった。
本展では、高峰秀子という<女優>として<妻>として自らを貫いたひとりの女性の生き方を、展示・上映・トークイベントで振り返る。 高峰秀子の愛用品や夫である松山善三との幸せな日々が垣間見える写真など、300点を超える資料も展示される。
上映作品は、木下惠介監督の『カルメン純情す』(52)、『二十四の瞳』(54)、『喜びも悲しみも幾歳月』(57)、『永遠の人』(61)、成瀬巳喜男監督の『浮雲』(55)、『放浪記』(62)、『あらくれ』(57)、『女が階段を上る時』(60)、『女の歴史』(63)、『乱れる』(64)、松山善三監督作品のデビュー作『名もなく貧しく美しく』(61)、『山河あり』(62)、『六條ゆきやま紬』(65)のほか、鎌倉市にゆかりのある文士の原作作品『宗方姉妹』(50/大佛次郎原作・小津安二郎監督)、『朝の波紋』(52/高見順原作・五所平之助監督)など。
10月20日(日)には、『カルメン純情す』の上映の後、養女で文筆家の斎藤明美氏、11月17日(日)は、『あらくれ』上映後、小説家の山内マリコ氏、12月7日(土)は『山河あり』の上映後、斎藤明美氏のトークイベントが予定されている。(10/20は完売)
鎌倉市川喜多映画記念館
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