『侍役者道~我が息子たちへ~』
The Way of the SAMURAI Actor
昨年12月22日に上梓された本書は、昨年8月に急逝した俳優・千葉真一の自伝であり、綴られた彼の言葉からは〝映画愛〟あふれる日本映画への熱い思い、映画人、役者としての仕事に向き合う姿勢などがダイレクトに伝わってくる。映画俳優としての在りようを模索し、日本映画の未来のために尽力し続けた人生だったことを思い知らされる。
オリンピックを目指した体操選手から映画俳優への転身、初主演作テレビドラマ「新 七色仮面」、千葉が心酔していた2人の〝サムライ〟深作欣二と高倉健との出会い、大ヒットを記録し、千葉真一の名を一躍全国区にしたテレビドラマ「キイハンター」、映画『仁義なき戦い 広島死闘篇』クランクイン直前での前代未聞の配役の交代劇の顛末、「自分以外にもアクションができる俳優をそだてなければ」と発足したジャパンアクションクラブ(JAC)、初の時代劇出演作『柳生一族の陰謀』以来、生涯の当たり役となった柳生十兵衛役、クエンティン・タランティーノ、キアヌ・リーヴス、サミュエル・L・ジャクソン、ユマ・サーマン、ジャッキー・チェンといった千葉真一ファンを自認する世界の映画人たちとの交流など、映画俳優・千葉真一のさまざまな場面、エピソードが、克明に語られている。そして、すべての発言の背景には、千葉の〝映画愛〟が浮き彫りにされる。
最終章のタイトルは「息子たちに託した夢~ハリウッドで武士道の映画をつくる」。息子たちとは、映画、テレビドラマで活躍中の俳優の新田真剣佑と眞栄田郷敦である。千葉は2人の息子のために、映画化可能な脚本を20本近く書いていた。千葉がアメリカで実現したかった最後の夢は、日本の「武士道」の精神を描いた作品をハリウッドの映画会社で撮ることだったという。そして最後に「息子たちが、その私の最後の夢をきっと、かなえてくれるはずだ」と結んでいる。本書で語られるすべてが、千葉の遺伝子を受け継ぐ2人の息子へのメッセージに思えてならない。
本邦初公開となる海外の映画人たちとのショット、子どもたちとの秘蔵写真も満載(プライベートのカラー写真40点+本文写真24点)。さらに、千葉があたためていた映画の構想案も複数紹介されている。前書きで記されている千葉の言葉を紹介しておこう。
「映画は人を活かす芸術である。監督はスタッフや役者を活かし、役者は共演者を活かす。人を活かし、人が活かされることによって素晴らしい映画が生まれる」
著者:千葉真一
構成:米谷紳之介
定価:1,760円(税込)
発行元:双葉社