23.07.29 update

[泉屋博古館東京]企画展「楽しい隠遁生活─文人たちのマインドフルネス」いよいよ開催

 俗世を離れ、清雅な地で隠遁生活を送りたいと願うのは、忙(せわ)しない現代に生きる私たちばかりではないでしょう。今日まで語られる、平安・鎌倉時代の「西行」や江戸時代の「芭蕉」らも俗世を離れた草庵暮らしを積極的に求めた隠者といえなくもありません。

 昔の人たちは、政治や社会のしがらみから逃れ、清廉な生活に憧れたがために、自ら娯しみ遊戯の精神をもって自由を希求する「自娯遊戯」の世界に憧れ、山水・絵画などに求めてきました。東洋の山水画などには生き方の理想が描かれ文学的テーマを見い出すことができます。たとえば、聖天子の尭に招かれても、これをけがらわしいとした「許由」など古代中国の著名な隠者や、三国時代末(3世紀)の「竹林の七賢」、南北朝時代(4~5世紀)の「陶淵明」などは、後世まで絵画工芸の主題となっています。

 田舎暮らしのスローライフを求めた隠遁生活から、現実を切り抜ける厳しく過激な隠遁まで、多種多様なスタイルがありますが、本展は、理想の隠遁空間をイメージした山水・風景や彼らが慕った中国の隠者たちの姿が描かれた絵画作品だけでなく、清雅な暮らしの中で愛玩されたと思われる細緻な文房具なども併せて展示されます。中国の知識階級である士大夫や日本の文人たちが抱いたマインドフルネス(安寧な心理状態)に触れることで、超高速の情報が飛び交う現代社会に生きる私たちにとって、暮らしを楽しむ生の充実の一助になるかもしれません。

伝 仇英《山水人物図(陶淵明図)》(部分) 中国・明時代 泉屋博古館
長吉《観瀑図》(部分) 室町時代(16世紀) 泉屋博古館

「企画展 楽しい隠遁生活─文人たちのマインドフルネス」

会期:2023年9月2日(土)~10月15日(日)
会場:泉屋博古館東京(港区六本木1-5-1)
開館時間:11:00~18:00 *金曜日は20:00まで開館 入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 (9/18/ 10/9 は開館、翌9/19/ 10/10 は休館)
入館料:一般1,000円 高大生600円 中学生以下無料
HP: https://sen-oku.or.jp/tokyo/
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)


映画は死なず

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