24.01.22 update

「世界遺産、平泉」の至宝を東京国立博物館で! 建立900年 特別展「中尊寺金色堂」

 

 戦いが続いていた平安時代末期、岩手県平泉に館を移し東北地方を治めることになった奥州藤原氏の初代、藤原清衡(1056~1128)が願ったのは平和な世の中をつくることだった。その願いが込められた中尊寺金色堂は天治元年(1124)に建立された。東京国立博物館では、建立900年を記念した特別展「中尊寺金色堂」が2024年1月23日(火)~4月14日(日)の期間開催される。

 金色堂は東北地方現存の最古の建造物でありながら、螺鈿、紫檀、象牙、貴石などを用いた絢爛豪華な装飾が施されており、奥州藤原氏の栄華を伝えるとともに、清衡、基衡、秀衡らの遺体が眠る「葬堂」としての役割を今も果たし続けているのも特徴だ。

 会場に入ると超精密な8KCGによって巨大なディスプレイに原寸大に再現された金色堂の正面から内部が映し出されている。煌びやかで迫力のある映像はあたかも堂内に入ったような気分に満たされ、清衡らがみた極楽浄土の夢を共有できることだろう。

8KCG:©NHK/東京国立博物館/文化財活用センター/中尊寺

 金色堂堂内には、「中央檀」「西南檀」「西北檀」の三つの須弥壇(しゅみだん)があるが、本展では、清衡が眠る中央檀の檀上に安置されている国宝の仏像11体がそろって展示される。これは寺外で公開される初めての試みである。現地ではガラスの向こうに正面の姿でしか見ることができないが、本展では11体のそれぞれの仏像の横や後ろからも拝観できるまたとない機会である。
 さらに国宝・金銅迦陵頻伽文華鬘をはじめとするまばゆいばかりの工芸品の数々や、清衡の遺骸を収めていた重要文化財「金箔押木棺」なども展示されている。

 奥州藤原氏3代当主として最盛期を支えた藤原秀衡が源義経を庇護した人物であることもよく知られている。音声ガイドナビゲーターの声優・梶裕貴さんが、義経目線になって金色堂や奥州藤原氏に対する感謝の気持ちを語ったり、中尊寺貫主の奥山元照師も特別出演するなど、音声ガイドでしか聞くことのできないコンテンツもたくさん盛り込まれている。

 本展で長い歳月を経て今に伝わる「世界遺産 平泉」に魅せられることだろう。きっと現地を訪れたくなるにちがいない。

建立900年 特別展 「中尊寺金色堂
会期 :2024年1月23日(火)~4月14日(日)
会場 :東京国立博物館 本館特別5室
開館時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日、2月13日(月・休)、3月25日(月)は開館
観覧料(当日):一般1,600円 大学生900円 高校生600円 中学生以下、障がい者と介護者1名無料
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト:https://chusonji2024.jp/

映画は死なず

新着記事

  • 2024.11.01
    生前葬でお披露目する「詩」─萩原 朔美の日々   

    参列した人たちに呼びかけるメッセージ

  • 2024.11.01
    田中邦衛、露口茂、山本學らと俳優座養成所で同期の井...

    田中邦衛らと同期。黒澤映画では欠かせない俳優の一人

  • 2024.11.01
    冬から春先の箱根こそ大人の非日常体験が味わえる、芦...

    応募〆切:1月31日(金)

  • 2024.10.31
    「箱根旅」がずっとお得になる! dポイントを「つか...

    「箱根旅」がお得になる「dポイント」サービスの導入

  • 2024.10.31
    一糸乱れぬユニゾンで世界のエンタメ界をも魅了した双...

    ザ・ピーナッツ「恋のフーガ」

  • 2024.10.30
    第4回 森繁久彌(後編)☆ 小津安二郎への反抗

    文=高田雅彦

  • 2024.10.30
    ミニシアターブームを代表する名作『バグダッド・カフ...

    11月29日(金)試写会

  • 2024.10.29
    世界遺産「パリ・ノートルダム大聖堂」の一般公開が1...

    文化財保護を訴求する世界巡回展が日本科学未来館で開催

  • 2024.10.29
    映画『十一人の賊軍』―名もなき罪人たちはなぜ命を賭...

    山田孝之 仲野大賀ダブル主演、監督:白石和彌

  • 2024.10.28
    あぁ!二宮金次郎

    学校を追われたのか…

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!