24.02.26 update

「安井仲治」を知らずして写真芸術を語るなかれ、「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」展、東京ステーションギャラリーにて開催中

 日本の写真史に傑出した存在として知られる安井仲治(1903-1942)。わずか約20年という短い写真家としての生涯とはいえ、その膨大にして多彩な写真表現の全貌を見ることができる回顧展が、東京ステーションギャラリーにおいて2月23日(金・祝)より開催されている。

 安井仲治は、明治36年(1903)大阪に生まれ18歳で関西の名門・浪華写真俱楽部に入会。大正・昭和の戦前期の日本の写真界は、アマチュア写真家たちの熱心で精力的な探求心によってリードされ、豊かな芸術表現がなされてきたが、まさに、安井仲治はこの時代の写真芸術を牽引して余りある存在だった。同時代の写真家はもとより、後世に活躍する土門拳、森山大道ら名だたる写真家からも称賛を得てきた安井仲治。その透徹した眼力と感受性、そして多岐にわたる技術や表現様式への取り組みは、〝近代写真の金字塔〟ともいえる。

《(馬と少女)》1940年、個人蔵(兵庫県立美術館寄託)

 なんでもない景色、小さく、醜く、一顧だにされないものにさえ注がれる眼差し。その独自の被写体を見出す感性こそ、写真家・安井仲治の魅力である。写真は単に記録ではなく、そこに隠れた美を表現しようとする安井のセンスは、デジタル万能の現代に一石を投じているようにも思える。

《蛾(二)》1934年、個人蔵(兵庫県立美術館寄託)

 本展の200点以上の出展作品は、戦災を免れたヴィンテージプリント約140点、ネガやコンタクトプリントの調査に基づいて制作されたモダンプリント約60点、往時の様々な資料を展示してその活動を実証的に跡付けしながら、写真の可能性を切りひらいた偉大な作家の「全仕事」を現代によみがえらせた貴重な回顧展といえよう。

「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」は、東京ステーションギャラリーにて、2024年2月23日(金・祝)~4月14日(日)開催。

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