生誕111年、明治生まれのアーティストとはいえ、昭和を代表する前衛芸術のリーダーとしてその名は知られ、幅広い世代の人々に記憶されていることだろう。
昭和45年(1970年)大阪万博のテーマ館の、聳え立つ「太陽の塔」が代表的な作品として浮かぶ。テレビでは「芸術は爆発だ!」と叫ぶCMもあり、昭和時代の過激な芸術家というより、どこかタレント風でユーモア溢れる露出が先立っていたように記憶する。しかし、岡本太郎の芸術人生を、私たちはくっきりとした輪郭でとらえることができていないのではないだろうか。
1929年(昭和4年)に渡仏、抽象表現に影響されながら画家としてのアイデンティティを確立し、帰国後、自らの芸術理念の核となる「対極主義」を提唱。制作のみならず著作『今日の芸術』、『日本の伝統』などで文化・芸術論を展開した。しかし、前衛アーティストとして、反権力・反体制でなければならないという立ち位置から、大衆にダイレクトに語りかけるものへと広がり、「太陽の塔」を頂点にパブリックな空間に展開される巨大な彫刻や壁画など、生活の中で生きる作品群は、「芸術は大衆のものである」という信念そのものを象徴するようになって行く。それゆえに、1996年の没後もなお多くの人々を惹きつけてきたに違いない。
「展覧会 岡本太郎」は、最初期から晩年までの代表作・重要作を網羅し、国内各地の美術館からの出品作品も加えられ岡本芸術の全貌に迫り、岡本の苦悩する内面から爆発する芸術の特質と本質まで、さらに底流にある人間・岡本太郎の輪郭をとらえることになるだろう。不安定な状況がつづく現在の社会を力強く生き抜くヒントを見つける機会となるかもしれない。
展覧会は、大阪、東京、愛知の三会場を巡回する。
〈大阪展〉2022.7.23(土)—10.2(日) 大阪中之島美術館
〈東京展〉2022.10.18(土)—12.28(水) 東京都美術館
〈愛知県〉2023.1.14(土)—3.14(火)予定 愛知県美術館
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト https://taro2022.jp