第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した役所広司が、ハニカミながらレッドカーペットを歩く姿が記憶に新しい。待望の受賞作『PERFECT DAYS』が、12月22日(金)からTOHOシネマズ シャンテほかにて、全国公開となる。
監督は、ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース。『パリ、テキサス』(84)、『ベルリン・天使の詩』(87)等数々の名作を発表し、80年、90年代のミニシアターブームを牽引してきた。2023年生誕120年の小津安二郎監督の足跡を追ったドキュメンタリー『東京画』をつくったほど、小津監督へのリスペクト、敬愛が深い監督でもある。
本作は公園トイレ清掃員として働く平山(役所広司)が淡々と生きる毎日をまるでドキュメンタリー映画のように描く。会話(セリフ)も少ない。毎朝同じ時間に起きて、歯を磨き、車で渋谷のトイレへ向かう。車内の音楽は、カセットテープだ。お昼はとある神社で木漏れ日を浴びながら簡単に済ます。掃除が終わると行きつけの飲み屋へ。読書をして枕元の電気を消して寝れば、もう次の朝だ。
平山の暮らすアパート、銭湯、コインランドリー、休日に通う店は、昭和のかおりのする懐かしい日本の風景だ。監督自らが歩きそれらのロケ地を探し回ったという。
そしてその対極にあるのが、平山が清掃する渋谷区の公共トイレだ。世界的な建築家やクリエーターたちがそれぞれの視点でリニューアルしたハイテクが施されたトイレなのである。
そもそも2020東京オリンピック・パラリンピックを前に、世界の人々に東京の公共トイレは美しいといわれるようにしよう、と発案されたことが契機となった。世界的な建築家やクリエーターたちが取り組み、17箇所の公共トイレが生まれ変わったのだ。「THE TOKYO TOILET」と名付けられたプロジェクトだった。一日に3度の清掃やメンテナンスを行うシステムも完全にサポートしており、海外メディアからの注目も大きい。
平山の仕事中に、あるいはオフの時間に出会う人々がいる。その中で、三浦友和とのシーンと、三浦が言った「結局、なんにもわかんないまんま 終わっちゃうんですかね」というセリフが心に響いた。
渋谷の公衆トイレに入ったら黙々とトイレ掃除をしている平山さんに出会えそうな気がしてならない。
『PERFECT DAYS』
12月22日(金) よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、 高崎卓馬
製作:柳井康治
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
製作:MASTER MIND 配給:ビターズ・エンド
©2023 MASTER MIND Ltd.
perfectdays-movie.jp