本作、アンジーとは、草笛光子である。映画『九十歳。何がめでたい』で原作の作家・佐藤愛子の日常は斯くありなんと見事な単独主演作を演って、日刊スポーツ映画大賞主演女優賞を受賞、第48回日本アカデミー賞優秀主演女優賞に選ばれた、草笛光子が今度はちょっと風変わりな婆さん役で、ある街に風と共に飄然とあらわれた。
初めは謎めいた不気味な白髪の女は、自称「お尋ね者」と言い、廃屋同然のイワクつきの物件を買い取るというのだ。バッグの中身の札束をちらちらと見せられて、訝っていた大家の寺尾聰は二つ返事でOK。

さて、アンジーはこの物件をBARに改装しようと動き出す。開業準備を手伝ってくれたホームレス(六平直政)に、特製カレーをふるまいながら「人間ねぇ、まともなもの食わないとだめよ」と勇気づけたり、近所の女手一つで息子を育てる満代(松田陽子)と悩み多き高校生の息子麟太郎(青木柚)に向かって、「そんなね、思いつめた顔するんじゃないよ、いい顔してるんだから」と発破をかけたり、ことほど左様に色々な問題を胸に抱えながら日々を懸命に生きる街の人たちは、アンジーと出会い触れ合っただけで魔法にかけられたように勇気づけられ自分を取り戻してゆくのだ。

そして「生きるってことは簡単じゃないの。面倒だし複雑だし、汚いことだらけ」と語りかけながら、「でもわたしたちはこの世界で生きるしかない。だから最初の一歩を踏み出したら、あとは動く、動く、動く。止まったらお終い」と力強く声をかけ人生を開き直らせる。その言葉一つ一つが、魔法のように人々の心に変化をもたらしていく。アンジーの説得力がますます輝きを増してゆくのは、女性のトップランナーとして芸能生活74年、現在も輝き続けるその姿が全世代に支持される草笛だからこそで、余人をもって代えがたし、なのである。91歳のヒロイン、アンジーこと草笛光子、こんなお尋ね者なら会いに行きたい。
監督の松本 動(ゆるぐ)曰く、「これまでの邦画は高齢者が主人公というと、(ネガティブになりやすいので)お婆さんが元気にかっこよく痛快に活躍するような映画をつくりたかった。老若男女、誰もが憧れるようなお婆さん、アンジーを誕生させて、草笛さんには楽しく自由に演じてもらいたかった。そうすれば魅力的なアンジーの活躍で素敵な映画が生まれるはず」と。
元気をもらえる痛快おとぎ話は、4月4日(金)に幕が開く!

『アンジーのBARで逢いましょう』
4月4日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開
出演:草笛光子
松田陽子 青木 柚 六平直政 黒田大輔 宮崎吐夢 工藤丈輝
田中偉登 駿河メイ 村田秀亮(とろサーモン) 田中要次 沢田亜矢子 木村祐一
石田ひかり ディーン・フジオカ
寺尾 聰
監督:松本 動 脚本:天願大介
配給: NAKACHIKA PICTURES
公式サイト:angienobar.com
©2025「アンジーのBARで逢いましょう」製作委員会