8月5日( 金)よりシネスイッチ銀座ほか全国公開となったドキュメンタリー映画『長崎の郵便配達』。本作は、映画『ローマの休日』のモチーフとなったといわれるタウンゼンド大佐が、被爆した長崎の少年と出会い、ノンフィクション小説『THE POSTMAN NAGASAKI』を出版。タウンゼンド氏の娘であり、女優のイザベル・タウンゼンドさんが、父の著書とボイスメモを頼りに、父と少年の想いを辿っていくというドキュメンタリー映画である。
1945年8月9日、郵便局員として配達中に被爆した谷口稜嘩(スミテル)さんは当時16歳。背中一面に重度のやけどを負った。被爆から約3年7ケ月の治療を経て奇跡的に生還し郵便局員に復職した。谷口さんは、日本原水爆被害者団体協議会の代表をつとめるなど、2017年8月に亡くなるまで、約70年にわたり、被爆者運動を牽引した。
2015年には、ニューヨークの国連本部で開催された「核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議」で、スピーチもした。「赤い背中の少年」として世界的に知られる写真をかかげ、「3年7ケ月の闘病生活の間、1年9ケ月うつぶせの状態で身動き一つできなかったので、胸が床ずれで腐りました。胸は今でもえぐり取られたようになり、肋骨の間から心臓の動いているのが見えます。私はこんな状態で今日まで生きてきました」と、原爆の恐ろしさ、深い傷について語った。
谷口さんは、ピーター・タンゼンドさんの著書『THE POSTMAN NAGASAKI』の復刊を誰よりも望んでいたという。
ウクライナ侵攻が始まり、「核兵器」という言葉が他人ごとではなくなってきた。生涯をかけて核廃絶を世界に訴えた谷口さん。その願いが込められた『長崎の郵便配達』は、貴重な作品である。
35年以上にわたり、原爆詩の朗読活動を行う吉永小百合さんからの応援コメントは、以下の通り。
2015年の夏、長崎で私は谷口さんのスピーチ「平和への誓い」を聴きました。
被爆後1年半以上も俯せのまま治療を受けていた谷口さん。
核兵器廃絶への強い思いに、私は胸がいっぱいになりました。
「長崎の郵便配達」を多くの方達に観ていただきたい。そして核兵器の無い世界の実現のために、みんなで努力出来たらと願っています。吉永小百合
『長崎の郵便配達』
8月5日(金) シネスイッチ銀座ほか全国公開
©️The Postman from Nagasaki Film Partners