23.06.29 update

躍動するダンスとゴージャスな楽曲にドラマチックな構成と〝すべてが見どころ〟のミュージカルの金字塔 ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』

 2012年に東急シアターオーブのオープニングを飾った記念すべき作品、ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』が帰ってくる。1957年にブロードウェイで幕を開けて以来、時空を超えて永遠に輝き続けるミュージカルだ。世界で最も愛されるミュージカルの一つと言っていいだろう。このミュージカルに憧れて、ミュージカル俳優の道を目指した人たちも少なくない。日本で知られるようになったのは、61年の映画『ウエスト・サイド物語』によってだろう。アカデミー賞ではノミネートされた11部門の内、作品賞、監督賞、助演男優賞(ジョージ・チャキリス)、助演女優賞(リタ・モレノ)など10部門でオスカーを獲得し、日本でも大ヒットした。2021年にスティーヴン・スピルバーグ監督初のミュージカル映画として製作された2度目の映画化『ウエスト・サイド・ストーリー』で、この名作と出合った若い世代の人たちも多いだろう。ゴールデングローブ賞ではコメディ・ミュージカル部門で作品賞も受賞し、大きな話題を呼び、「ぜひ劇場でミュージカルを再び!」の機運のもと、22年の12月からミュージカルのワールドツアーが始まった。

©Johan Persson

 ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』を下敷きにしたミュージカルであることは、いまさら言うまでもなく日本でもよく知られるところである。レナード・バーンスタインが作曲、作詞を後に作曲家としてもミュージカル界の巨星となるスティーブン・ソンドハイム、脚本をアーサー・ロレンツ、そしてジェローム・ロビンスの演出と振付。この4人の芸術家の名前を聞いただけでも、ミュージカル・ファンにはたまらない作品だろう。

©Johan Persson


 物語の舞台は50年代のニューヨーク、ウエスト・サイド。夢を求めてアメリカにやってきた移民たちが暮し、偏見や差別に満ちた社会の中では、若者同士の敵対するグループとの抗争が日々繰り広げられていた。なかでも、ポーランド系移民で構成される<ジェッツ>とプエルトリコ系移民の<シャークス>は、特に激しく敵対していた。そんな中、ジェッツの元リーダーであるトニーは現リーダーのリフとダンスパーティに出かけ、そこでトニーは美しいマリアと出会い、2人は瞬く間に恋に落ちた。だが、マリアは対立するシャークスのリーダーであるベルナルドの妹だった。恋と友情の板挟みに悩むトニー。禁断の恋は悲劇の連鎖を生んでいく。人種差別と、それを乗り越えようとした愛の悲劇の物語である。

©Johan Persson

 ひと言で言うならば、〝すべてが見どころ〟のミュージカル。まずは“PROLOGUE”をはじめ、“THE DANCE AT THE GYM”“AMERICA”“COOL”など、〝感情を踊る〟ことを求めたというロビンスの振付によるダイナミックなダンス、さらに“MARIA”“TONIGHT”“I FEEL PRETTY”“SOMEWHERE”なども含む、バーンスタインが生み出したジャズ、ポップス、ラテン、バレエ、クラシック、現代音楽と、すべての音楽の魅力を盛り込んだゴージャスな名曲の数々。61年にリリースされた映画版のサウンドトラックは空前のヒットを記録した。私も書棚から取り出して、何度も聴き直している。聴くたびに心が揺さぶられると同時に、名曲に出合えた幸福感に満たされている。加えて、映画『追憶』『愛と喝采の日々』などの脚本でも知られるロレンツの緻密な構成と心に響く煌めく科白の数々。すべてにおいて、ここまでハイレベルなミュージカルは稀有だろう。

©Johan Persson

 今回のツアーは、『ウエスト・サイド・ストーリー』を知り尽くしたクリエーターであるフリオ・モンヘが振付を、ロニー・プライスが演出を担当するという。さらなる輝きを増して、われわれ観客を大いにときめかせてくれるに違いない。観た後に、絶対誰かに伝えたくなるミュージカルだ。

©Johan Persson

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