『セールスマンの死』(ピュリツァー賞、トニー賞受賞)、『みんな我が子』、『るつぼ』などで知られる20世紀を代表するアメリカの劇作家アーサー・ミラーが1955年に書いた戯曲『橋からの眺め』が上演中である。近年、ロンドンのウエストエンドでリバイバル作品として上演され、ローレンス・オリヴィエ賞、トニー賞の各賞を総なめにした。62年にはシドニー・ルメット監督、ラフ・ヴァローネ主演で映画化もされている。
物語の舞台は、50年代のニューヨーク・ブルックリンの労働者階級が住む波止場。イタリア系アメリカ人の港湾労働者エディは、妻のビアトリスと17歳になる最愛の姪キャサリンとの3人暮らし。エディは幼くして孤児となったキャサリンをひきとり、ひたすらキャサリンの幸せを願って愛情深く育ててきた。そこへ、ビアトリスの従兄弟マルコとロドルフォが同郷のシチリアから出稼ぎ目的で違法移民として入国し、エディ一家と同居するようになる。最初は、エディも歓迎するが、キャサリンが色男ロドルフォに徐々に惹かれていくようになると、彼らに対する態度が豹変する。愛しかなかった男が、強い思い込みによって怒れる男となったとき悲劇を招く……。
本作の演出を手がけるのは、演劇とオペラの演出家として定評があり、英国内外で活躍するジョー・ヒル=ギビンズ。演出作『リチャード二世』は、英国ナショナル・シアターが厳選した、世界で観られるべき傑作舞台を上映するプロジェクト、ナショナル・シアター・ライブでも上映された。今回が日本での初演出である。
主役のエディを演じるのは、2004年にPARCO劇場『MIDSUMMER CAROL~ガマ王子VSザリガニ魔人~』で初舞台を踏み、10年の2作目の舞台『ジャンヌ・ダルク』以来、実に13年ぶりの舞台となる伊藤英明。
ビアトリス役には、テレビドラマ「だが、情熱はある」「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」、映画『銀河鉄道の父』など映像作品のみならず、舞台にも意欲的に取り組み高い評価を受けている坂井真紀。キャサリン役にはテレビドラマ「なつぞら」や「鎌倉殿の十三人」などの話題作でも注目されており、今回が初舞台となる福地桃子。ロドルフォ役には、映画、テレビドラマ、舞台と幅広く活躍を続け、さらには中国やタイのテレビドラマにも出演している松島庄汰。マルコ役には、映画、テレビドラマと話題の映像作品に出演しながら、舞台にもコンスタントに出演を続け、『ピサロ』や『歌うシャイロック』の記憶も新しい和田正人。そして、本作のストーリーテラーとなる弁護士アルフィエーリ役には、アーサー・ミラー作品は昨年の『セールスマンの死』のベン役に続いて2作目となる高橋克実。毎年舞台に立ち続け、今年も4月~6月の『帰ってきたマイ・ブラザー』が好評だった。12月には『海をゆく者』が控えている。