23.12.11 update

筒井康隆の傑作小説が、千葉雄大、藤井隆らの出演舞台で音楽とダンスの狂乱とともに令和に蘇る! 『ジャズ大名』

 長塚圭史芸術監督のもと3年目となる、神奈川芸術劇場2023-2024メインシーズンのシーズンタイトルは「貌(かたち)」。さまざまな意味を持つ「貌」を、多彩なラインアップを通して、さまざまな角度から「貌」を見つめている。そして、2023年12月、「貌」シーズンの<ホール>公演が開幕した。筒井康隆が1980年代に発表した傑作小説『ジャズ大名』の舞台化である。江戸末期、アメリカから漂着した黒人奴隷と出会った音楽好きの藩主が、彼らの奏でる音楽の虜となり、城中でジャム・セッションを繰り広げる姿を描く奇想天外なコメディで、1986年には、岡本喜八監督、古谷一行主演で映画化もされている。
 今回は小説から新たに上演台本を書き起こし、原作の精神を令和の世に蘇らせるという。物語の舞台を原作の九州の小藩から、実在した神奈川・小田原藩の支藩、荻野山中藩に置き換え、神奈川の史実を織り込んだアレンジを加えることで、神奈川を拠点とするKAATならではのオリジナル作品を創りあげるというもの。

 簡単にあらすじを紹介すると、維新の嵐が吹き荒れる江戸末期、アメリカの南北戦争が終結し、解放された黒人奴隷が故郷のアフリカを目指して船に乗り込むが、日本の小藩に流れ着いてしまう。鎖国の時世、外国人の扱いに困る藩の役人たちは彼らを座敷牢に閉じ込めるが、好奇心旺盛な藩主は彼らの奏でる楽器の音に夢中になり、家老の制止も聞かず、次第に城中を巻き込んでジャム・セッションを繰り広げていく。

 上演台本と演出は、生活感あふれる日常的な光景が、飛躍を重ねて宇宙規模のラストへと結実するような物語創作と、少人数の俳優が多くの役を演じ分ける独創的なスタイルが持ち味で、舞台のみならず映像界でも多くの作品に携わる福島充則。深い人間洞察を笑いのベールに包んで表現し魅せる芝居を提供している。脚本を手がけた日本テレビ系列で放送された連続ドラマ「あなたの番です」は、社会現象とも言える大きな話題を呼んだ。

 音楽好きの藩主を演じるのは、映像作品のみならず『危険な関係』『ポーの一族』『世界は笑う』など、舞台でも意欲的に出演を重ねている千葉雄大。家老役には、芸人、歌手、俳優とマルチな活動を続け、近年の舞台でも蓬莱竜太作・演出の『広島ジャンゴ2022』、こまつ座『雪やこんこん』、宮藤官九郎作・演出『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』、三谷幸喜作・演出『大地(Social Distancing Version)』など、幅広いジャンルの作品で魅力を発揮している藤井隆。

 初日前会見に、福島充則、千葉雄大、藤井隆、そして現在連続テレビ小説「ブギウギ」にも出演中で、今回は複数の役を演じ分けながら狂言回しの役割を担う富田望生が顔を揃えた。

撮影:引地信彦

1 2 3

映画は死なず

新着記事

  • 2024.06.14
    創建1200年記念 特別展「神護寺─空海と真言密教...

    応募〆切:7月15日(月)

  • 2024.06.14
    実話をもとに描かれた、海の男たちの誇りと絆の戦争秘...

    応募〆切:6月25日(火)

  • 2024.06.14
    自然写真家・今森光彦のライフワークの集大成、「今森...

    6月20日(木)~9月29日(日)

  • 2024.06.13
    三浦友和&山口百恵の二人を結んだ楽曲?! 松崎しげ...

    「愛の微笑み」から改題された

  • 2024.06.11
    マニフレックス公式HPの人気連載記事『暮らしのエッ...

    6月28日(金)~30日(日)

  • 2024.06.11
    田中邦衛、山本圭、加藤剛らが出演した社会派ドラマ「...

    日本を代表する彫刻家・佐藤忠良を父にもつ

  • 2024.06.10
    韓国500万人超えの大ヒットした、予測不能の海洋ク...

    応募〆切:7月10日(水)

  • 2024.06.06
    激動の20世紀を生きたあるの男の人生。〝世紀の小説...

    応募〆切:7月5日(金)

  • 2024.06.06
    八王子市夢美術館 特別展 「ルーヴル美術館の銅版画...

    応募〆切:6月30日(日)

  • 2024.06.06
    アカデミー賞Ⓡ 2度受賞の名優アンソニー・ホプキン...

    応募〆切:6月20日(木)

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!