23.04.26 update

第11回 会社を俯瞰で見る社長の立場だからこそ見えてきた攻めの姿勢


第11回
映画は死なず 実録的東映残俠伝

─五代目社長 多田憲之が見た東映半世紀─

文=多田 憲之(東映株式会社 代表取締役会長兼社長)

ただ のりゆき
1949年北海道生まれ。72年中央大学法学部卒業、同年4月東映株式会社入社、北海道支社に赴任。97年北海道支社長就任。28年間の北海道勤務を経て、2000年に岡田裕介氏に乞われて東京勤務、映画宣伝部長として着任。14年には5代目として代表取締役社長に就任し20年の退任と同時に取締役相談役就任。21年6月、現職の代表取締役会長就任。

企画協力&写真・画像提供:東映株式会社


 

 2月11日、東映六代目社長手塚治が亡くなった。62歳だった。2022年のラインアップ発表会では「創業以来最高の成績を出す」と力強く宣言し、有言実行で、見事に実現させたばかりだった。六代目社長の死に社員一同言葉を失った。まさにキツネにつままれたような出来事だった。社長の死によって、当面は私が会長職と社長を兼務することになった。まさか、再び社長という職に就こうとは、岡田裕介から、社長を言い渡されたときより驚いた。社長が在任中に亡くなるというのは、東映70年の歴史の中でも、初代社長である大川博以来のことで、会長と社長を兼任するのは、私が初めてだった。これは物心ともにかなりきついことだ。だが、このたび、4月1日付で、吉村文雄が七代目社長に就任した。やはり、社長と会長はそれぞれに存在していたほうがいい。社長と会長は、互いに相談相手である。それをすべて一人で決めなければいけない、役割を分担できないということは、やってみて初めてわかるしんどさである。仕事の進め方にしても、社員にとっても、社長と会長は兼務でないほうがやりやすいだろう。社員一丸となって、手塚社長の遺志を継いで東映の、ひいては映画業界のさらなる発展に努めるのが、今の我々ができる供養である。

 私が東映の社長に就任する前の話にもどるが、2008年1月に秘書部長に就任し、6月に執行役員になると同時に東映の傍系会社である三映印刷の社長に就任することになった。秘書部長としての務めを全うしないうちの辞令に、私がその任ではなかったのかと思ったりもしたが、秘書部長との兼務であった。午前中は三映印刷の社長として、午後からは本社の秘書部長としての仕事を務めるという日々だった。

 三映印刷では、ディズニー、ワーナー、パラマウント、20世紀FOXなど、ほとんどの洋画系のポスターなどの印刷を請け負っていた。東宝は自社の子会社でやっていたが、松竹も3分の1くらいは三映で印刷していた。三映の社長を受けたとき、仕事そのものは専門ではなかったが、数字を見るのが好きだったから、データを見ていて利益率が高いことがわかった。それで、やっていけるかもしれないなと思えた。就任したときは、ほぼ赤字の会社だったが、コストカットとやり方を考えれば、少しは利益が出るだろうとやってみたら、1年目で1億円の経常利益を上げた。2年目には2億円を超えた。自分でも、なかなかやるなと思えた。減収増益の状態を実践し続けた。それはコストカットによるもので、いかにコストを正常化させるかによって生まれた結果だった。東映印刷ではなく三映印刷としたのは、東映の名前を出せなかったからである。東映が他社の映画会社の印刷業務を受けるのに東映印刷では都合が悪い。三映の〝三〟は、東映のロゴである三角マークの〝三〟である。

 6年間、東映の100パーセント子会社の三映印刷の社長を務め、その間30億円近くの売上を達成し評価されることになった。その実績を引き合いに出されて、岡田裕介から、社長というのは、大きな会社でも、小さな会社でもやることは同じだと言われた。だから、大丈夫だから東映の社長をやれという理屈である。私は、それでも社長就任を固辞し続けたが、2014年4月、東映株式会社代表取締役社長に就任した。

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映画は死なず

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