23.12.18 update

第8回【私を映画に連れてって!】 カールスモーキー石井と映画監督・石井竜也、そして旧ジャニーズ事務所への忖度の時代に関わって……

 何しろ映画は初めてではあるが、石井竜也はスター監督でもある。注目度は高い。
 映画『「水の旅人 侍KIDS』(1993:原作は『雨の旅人』)で、脚本も書いてもらった末谷真澄さんとの親交はあった。自分の力不足から、大きく元の脚本が変わってしまったことは申し訳ないと思っていた。
 石井竜也氏が、初対面で『河童』のストーリーを話してくれた時、何となく『水の旅人 侍KIDS』が浮かんだ。共通しているのは「小さいお侍さん」と「いじめられっ子」……マイノリティー目線で見えるものの話である。末谷さんは快諾してくれ、そこからシナリオ制作が始まる。映像は石井竜也監督の中にある。しかも彼は絵描き。どんどん画にして、具体を見せてくれる。絵コンテに近いものがある。ただ、部分的ではあるので、それを脚本家が活字としてストーリーとして紡いで行ってくれる。これは、楽しい作業だ。
 主人公の少年はオーディションだったが、主役の藤竜也さんのキャスティングは石井監督の拘りが大きかった。W竜也ではないが、自分も是非、藤さんにお願いしたかった。
 ところが、その当時、藤さんは陶芸に熱心で個展を開くところまでの域にいらした。映画出演も数年なく、石井監督とご自宅に、口説き? に行くことになった。陶芸家という芸術家に会いに行くような気持ちで、もう俳優は引退気味?! の感じも漂っていた。映画界、芸能界、大げさに言うと「社会」とも一歩距離を置いているような。

「河井さん、世間と隔絶していると、知り合いが亡くなったことも知らないことが多くてね。あとで新聞の死亡欄とかで知ったりね(たぶん、新聞もテレビも見ない生活をされていたのかと)」

 その分、<米米CLUB>の活躍や<カールスモーキー石井>の派手目な化粧もあまりご存じなく、目の前にいるのは真面目な<石井竜也>監督の姿だった。現在は、映画を中心に主役もやり、大活躍されている藤さんだが、当時はそのような感じだった。

 石井竜也監督の熱心な説明が続いたあとで

「やりましょう!」と言ってもらい、主演の藤竜也さんが決まった。

 共演の陣内孝則さん始め、監督と自分が、何度も話しながらキャストは決めて行った。<カールスモーキー石井>の初監督なので、希望する俳優が出演してくれるのかと不安もあったが杞憂だった。

 石井監督のイメージは壮大だ。『E.T.』クラスの大作になりそうで規模感が難しい企画である。初監督なので、本来はそんなに大きな予算でやるべきではないと思いながら、彼の此処までの拘りや、<米米CLUB>の活動を考えると、今を逃すと映画のチャンスは少なく、『水の旅人 侍KIDS』や『タスマニア物語』に近い8億円の制作費とした。

 CGのない時代、東宝撮影所に大きなセットを組み、人物とクリーチャーとの合成など果敢にチャレンジした。ロケの多くは監督の故郷の北茨城市で撮影した。
 結果、僕の大好きな作品になり、新人監督賞など幾つかの賞ももらえた。
 日本ヘラルドが、配給、宣伝でがんばってくれた。ただ、8億円の制作費で8億円の興行収入だと成功とは言えない。今でも僕の周りで『河童』が好きな人は多い。ただ、異業種のスターが映画監督をやった作品! と、やや先入観や偏見に近い見られ方もした。

1994年12月10日、音楽グループ米米CLUBのボーカル、カールスモーキー石井こと石井竜也の映画監督デビュー作となる『河童』が公開された。石井の思い入れもあり、<CAPPA DOCIA(カッパ ドキア)>というカンパニーを作り、プロダクションとして製作した。石井の祖父と幼少期の父親との話と、茨城県の河童伝説が元になっており、人間の親と子のきずなを、河童と少年との出会いを通して綴ったファンタジー特撮映画である。最新映像技術を駆使してのビジュアルも話題になった。出演は、陣内孝則、藤竜也、原田龍二、坂上二郎らで、ロケ地も石井の故郷である北茨城市が中心になった。クリーチャーデザインも石井が手がけている。主題歌は米米CLUBの「手紙」だった。

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映画は死なず

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