22.08.26 update

第18回【成城シネマトリビア】  舟木一夫の〝学園〟生活も成城で!

 三作目が『髙校三年生』の続篇となる『続髙校三年生』(同年8月22日封切)。この大映映画でも、成城学園中学校の校舎や校庭が、主演の姿美千子や倉石功らが通う「東高等学校」に見立てられている。本作は『夢のハワイ』から、わずか三週間後の公開なので、両作はほぼ同時期に成城学園ロケを行っていたことになる。

 主演の二人やクラスメイトの女生徒(のちに浜口庫之助と結婚する渚まゆみ)など、キャストはほぼ同じであるものの、舞台設定が前作とは一変、続篇とはとても言い難いこの映画。大学進学組と就職組の対立が描かれる構図は、いまだ階級意識が残っていた時代ゆえのことで、今の目からはかなり古びて見える。本作の舟木は、倉石の弟が憧れをもつ優秀な工員役で、労働者の青年を微妙な陰りをもって演じている。

 のっけから成城学園中学校の校舎が目に飛び込んでくる本作。大映作品特有の柔らかい画面にはノスタルジックなムードが横溢、校庭をパノラミックに捉えたカメラワークからも、64年当時の成城学園ののどかな雰囲気がひしひしと伝わってくる。

 映画は、姿実千子と倉石兄弟が別れ別れになるところで、高らかに主題歌「高校三年生」が流れて終了。舟木一夫の‶学園もの〟は、成城学園以外でさらに続いていくこととなる。

 以上のとおり、先の東京五輪が開催された1964年という年は、成城学園が舟木一夫出演映画(註7)の撮影に積極的にキャンパスを提供、まさに舟木が(映画での)学園生活を謳歌した年にあたる。日活でつくられた舟木の‶学園もの〟で、成城学園がロケ地となることはなかったが、『こんにちは20才』(64年1月25日封切/森永健次郎監督。田代みどり・太田博之出演)では、『続髙校三年生』と全く同じ場所(中学校校庭、通学門)で撮影が行われている。舟木がのちに祖師谷の住人となるのは、このときの成城ロケ体験が影響したものであったろうか?

(註1)あの美空ひばりでさえ、日活では主演作がない。ただし舟木は(時代が違うから当然なのだが)、新東宝作品への出演経験はない。

(註2)本作の英語タイトルは、なんだか大瀧詠一のアルバム・タイトルみたいな『LET’S DANCE BON-ODORI IN HAWAII』。

(註3)鷹森立一は、本作に教員役で出演した千葉真一とはテレビ映画「キイハンター」(TBS)から『狼やくざ』(72年)、『ボディガード牙』シリーズ(73年)といったプログラムピクチャーに至るまで、多くの作品でコンビを組むこととなる。

(註4)スリーファンキーズ初代メンバーの高橋元太郎。脱退後はソロ歌手・俳優として活躍したが、代表作は何と言っても「水戸黄門」(TBS)の〝うっかり八兵衛〟であろう。

(註5)仙川の護岸改修工事が完了したのは1967年のこと。

(註6)リンダ嬢はここで、自曲「帰らなくちゃ」を熱唱。ちなみに、58年の狩野川台風で仙川が氾濫したとき、孤立した住民を三船敏郎がボートで救出した地区は、この池のすぐ東側にあたる。

(註7)この三作に共通するのは、ザ・スパイダースの堺正章が舟木の同級生役で出演していること。所属事務所の関係からか、堺は松竹の成城ロケ映画『思い出の指輪』にも登場する。


高田 雅彦(たかだ まさひこ)
1955年1月、山形市生まれ。生家が東宝映画封切館の株主だったことから、幼少時より東宝作品に親しむ。黒澤映画、クレージー映画、特撮作品には特に熱中。三船敏郎と植木等、ゴジラが三大アイドルとなる。東宝撮影所が近いという理由で選んだ成城大卒業後は、成城学園に勤務。ライフワークとして、東宝を中心とした日本映画研究を続ける。現在は、成城近辺の「ロケ地巡りツアー」講師や映画講座、映画文筆を中心に活動、クレージー・ソングの再現に注力するバンドマンでもある。著書に『成城映画散歩』(白桃書房)、『三船敏郎、この10本』(同)、『七人の侍 ロケ地の謎を探る』(アルファベータブックス)、近著として『今だから! 植木等』(同2022年1月刊)がある。

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