21.03.30 update

第1回『七人の侍』は〝成城メイド〟の映画

成城シネマトリビア─語り継ぐ映画村─
文:高田 雅彦


1932年、東宝の前身であるP.C.L.(写真化学研究所)が
成城に撮影用の大ステージを建設し、東宝撮影所、砧撮影所などと呼ばれた。
以来、成城の地には映画監督や、スター俳優たちが居を構えるようになり、
昭和の成城の街はさしずめ日本のビバリーヒルズといった様相を呈していた。
街を歩けば、三船敏郎がゴムぞうりで散歩していたり、
自転車に乗った司葉子に遭遇するのも日常のスケッチだった。
成城に住んだキラ星のごとき映画人たちのとっておきのエピソード、
成城のあの場所、この場所で撮影された映画の数々をご紹介しながら
あの輝きにあふれた昭和の銀幕散歩へと出かけるとしましょう。

 今や高級住宅地として、全国的にその名を知られる成城。その街の成り立ちは、1925年、一面の林野だった東京府北多摩郡砧村に、牛込原町(現在の新宿区)から成城学園の元となる成城第二中学校と併設の小学校が移転してきたことによる。

‶白亜の殿堂〟と呼び称されたP.C.L.の大ステージ。周りは畑と林ばかり ⒸTOHO(提供:東宝スタジオ)

 二年後の小田急線開通(1927年)を経て、1932年には東宝の前身P.C.L.(写真化学研究所)が「成城学園前」駅の南方にトーキー撮影用の大ステージを建造。これにより学園町であった成城(1930年に学園の名が地名につく)は、文化人のみならず多くの映画監督やスタッフ、煌めくスター俳優たちが住む街となっていく。

 昨2020年に、生誕百十年を迎えた黒澤明。この世界的監督も晩年は成城住まいだったが、長くコンビを組んだ三船敏郎(昨年が生誕百年)は、デビュー作『銀嶺の果て』(47年谷口千吉監督)撮影直後から成城で下宿生活を始めた、言わば生粋の〝成城人〟。やがて三船は、自邸ばかりか自らのプロダクションと撮影所もここ成城に置くこととなる。

 この二人が作り上げた作品が、海外で高い評価を受けているのはご存知のとおり。中でもひときわ人気が高く、〈映画の教科書〉、〈映画の中の映画〉とまで称されているのが『七人の侍』(54年)である。

 戦国時代、野武士の略奪を受ける農村を自己犠牲的精神で守り抜く侍たちの行為を、圧倒的なアクションと抒情性をもって描く本作。スティーヴン・スピルバーグやジョージ・ルーカスに愛されたことはもちろん、英国では最近に至るまで「史上最高の外国語映画」ベストワンの座を保ち続けている。

 同じ年に公開され、これまた海外での人気が高い『ゴジラ』とともに今もスタジオ入口に巨大壁画がそびえ立っているのは、東宝が両作品への敬意と謝意を失っていない証であろう。

1 2

映画は死なず

新着記事

  • 2024.03.04
    なぜ世田谷区はアーティストの街になったか。その3「...

    梅が丘~新宿まで

  • 2024.03.01
    今から準備、青森県内の美術館5館によるアートフェス...

    青森県で現代美術を楽しむ!

  • 2024.03.01
    金塊強盗からスーパースターへ!信じられないような実...

    応募〆切:3月25日(月)

  • 2024.03.01
    森美術館 ブラック・アートと日本の「民藝」の融合、...

    4月24日(水)~9月1日(日)

  • 2024.03.01
    なぜ世田谷区はアーティストの街になったか。その2「...

    祖師ケ谷大蔵~豪徳寺

  • 2024.02.29
    美空ひばり、成城の通りで歌う! 〝成城ロケ映画〟の...

    文=高田雅彦

  • 2024.02.29
    『ブギウギ』の淡谷のり子のドレスアップと重なる燕尾...

    東映映画『国定忠治』の名文句が忘れられない

  • 2024.02.28
    小林武史、三上博史、山口智子、種田陽平……映画『ス...

    文=河井真也

  • 2024.02.28
    破天荒なドイツのラッパーのサクセスストーリー!『女...

    3月29日(金)より全国順次公開

  • 2024.02.27
    芝居はボケ防止になるという話─萩原 朔美の日々 ...

    楽屋での雑談もまた楽し

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

information »

new 森ビルの「ヒルズ街育プロジェクト」が文部科学大臣賞を受賞

都市 森ビルの「ヒルズ街育プロジェクト」が文部...

森ビルの街づくりが表彰される!

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!