第5回 続・セールス四方山話 風雲篇

映画は死なず 実録的東映残俠伝

―五代目社長 多田憲之が見た東映半世紀―

文=多田 憲之(東映株式会社 代表取締役会長)

ただ のりゆき
1949年北海道生まれ。72年中央大学法学部卒業、同年4月東映株式会社入社、北海道支社に赴任。97年北海道支社長就任。28年間の北海道勤務を経て、2000年に岡田裕介氏に乞われて東京勤務、映画宣伝部長として着任。14年には5代目として代表取締役社長に就任し20年の退任と同時に取締役相談役就任。21年6月、現職の代表取締役会長に就く。

企画協力&写真・画像提供:東映株式会社

 前回に続き、北海道支社でのセールス噺におつきあい願うことにする。映画には続編がつきもので、東映でも映画がヒットすると、「二匹目のどじょう」とばかりに必ずと言っていいほど続編が製作されていた。

『白蛇伝』を第1作とする東映動画の長編アニメーション『わんわん忠臣蔵』を1963年(昭和38年)に公開する折に、当時人気があったテレビアニメーション「狼少年ケン」を併映作品として上映したところ好評で、翌64年には「まんが大行進」として子供向けにテレビアニメを数本まとめて上映したのが、春休み、夏休み、冬休みの時期にあわせて子供向け映画を劇場公開する「東映まんがまつり」の始まりだった。実際に「東映まんがまつり」の名称を使用したのは1967年7月の興行からだった。当時、映画館では土曜日の夜は毎週オールナイト上映をやっていたが、まんがまつりの期間は子供が対象なので、オールナイト興行ができない状況だった。オールナイト上映の収益が見込めないと、映画館の従業員たちの給料にも影響してくるということで考えたのが、オールナイト特別興行を組むことだった。

1963年に、東映長編動画第7作として公開された『わんわん忠臣蔵』。60年に公開された『西遊記』同様、原案・構成に手塚治虫を迎えた動物版『忠臣蔵』で、犬のロック(=石)が大石内蔵助で、動物園を牛耳る虎のキラーが吉良上野介と、名前のもじりがなされている。ちなみにキラーの声は俳優の西村晃が担当していた。58年に『白蛇伝』が日本初の長編カラーアニメーション映画として製作されて以来、『少年猿飛佐助』『西遊記』『安寿と厨子王丸』『アラビアンナイト・シンドバッドの冒険』(脚本を担当したのは手塚治虫と作家の北杜夫だった)、『わんぱく王子の大蛇退治』と毎年長編アニメーションが製作されており、当時の子供たちのほとんどは映画館で、食い入るようにスクリーンに見入った。色彩の美しさ、多くの人々になじみ深い題材ということなどもあって、子供に付き添って来た大人たちをも魅了した。『安寿と厨子王丸』の脚本を担当したのは、『めし』『晩菊』『夜の河』など日本映画史に残る多くの名作の脚本を手がけた田中澄江で、声の出演者には佐久間良子、北大路欣也、山田五十鈴、東野英治郎、平幹二朗、山村聰ら、贅沢な俳優たちがそろった。©東映

 札幌東映では、『山口組三代目』特集、『仁義なき戦い』特集といった特別興行を企画した。作品は何でもよかった。自分たちが見たいものを組めばいいのだ。「藤純子大会」でも、「健さん&文太」でもいい。『仁義なき戦い』の5本立て特集、それに『新 仁義なき戦い』3本立てというのもやった。一番客が入ったのが『山口組三代目』だった。続編の『三代目襲名』そして『山口組外伝 九州進攻作戦』の3本立て。これは当たった。いつやってもオールナイトで千人超えていた。

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