ゴールデンコンビといわれた山口百恵と三浦友和。私などは二人の活躍をリアルタイムで見て育った世代だ。二人が共演した「赤いシリーズ」は今でも記憶に残るドラマであり、特に「赤い疑惑」は山口百恵演じる白血病を患う薄幸の少女に涙しながらみていた。また二人には映画の共演も多かった。
川端康成の名作『伊豆の踊子』は、古くは田中絹代・大日方傳のコンビにはじまり、吉永小百合・高橋英樹版など、それまで5本も撮られていた。山口百恵・三浦友和版は1974年12月に公開されたが予想を上回る大ヒットとなり、その後二人のコンビの映画は東宝のドル箱シリーズとなっていった。続く『潮騒』(74) 、『絶唱』(75)、『風立ちぬ』(76)、『春琴抄』(76)、『泥だらけの純情』(77)、『霧の旗』(77)、『ふりむけば愛』(78)、『炎の舞』(78)、『ホワイト・ラブ』(79)、『天使を誘惑』(79)、そして山口百恵の引退記念作品となる『古都』(80)と、12本の共演映画がある。
私の従姉は三浦友和と同い年で、彼の大ファンだった。多分12本の映画はすべて観ているだろう。なかでも、『ふりむけば愛』を観た後は、劇中で三浦友和が歌った「ふりむけば愛」に感動し、レコードをプレゼントしてくれた。初めて聴く三浦友和の歌声は優しく、しみじみと語りかけるような歌い方で、彼の人柄がにじみでるような素敵な曲だと思った。後に作詞・作曲が小椋佳、編曲が松任谷正隆であることに納得した。
残念なことに私は、公開当時は映画を観ておらず、だいぶ経ってからレンタルビデオで偶然見つけて観た覚えがあるがぼんやりとした記憶しか残っていなかった。ところが最近になって動画配信サービスで改めてじっくりと鑑賞したのである。便利な時代になったものだ。
監督は大林宣彦、脚本はジェームス三木である。二人はグリコのポッキーのCMで初共演したが、このCMも映画監督の大林宣彦の撮影だった。結婚するまでの7年間、大林監督が二人のCMを撮り続けた。映画『ふりむけば愛』は、コンビ8作目で大林監督がメガホンをとり、それまでの文芸作品やリメイクではないオリジナル作品。サンフランシスコと東京を行きつ戻りつのドラマが展開する。
70年代のサンフランシスコの市街やゴールデン・ゲート・ブリッジ(金門橋)の風景、さらに当時の共演者の若かりし日の姿などがとても新鮮だった。ディスコでギター片手に「ふりむけば愛」を歌う三浦友和、そこには恋しい人を熱い思いで見つめる山口百恵の眼差しがあった。三浦はRCサクセションの忌野清志郎と高校の同級生で、音楽の道に進もうと模索していた時期もあったというから、主題歌を歌うことにも抵抗がなかったのだろう。偶然とすれ違いが重なりハラハラさせられるが、最後はハッピーエンドで幕を閉じる。
二人のCMを撮って来た大林監督は、二人の視線から憧れが恋に変わり、そして愛に変わっていく姿を見逃さなかった。本作をきっかけに二人は結婚に踏み切ることを決意したと言われる。
このレコードのもう一曲は、作詞・来生えつこ、作曲・来生たかお、編曲・松任谷正隆による「ほほえみの扉」で、ドラマ「あすなろの詩」の主題歌である。こちらも三浦友和の爽やかな歌声が生かされた曲だ。今回、映画『ふりむけば愛』の背景をたどってみて、監督や音楽家との素晴らしい出会いに恵まれたからこそ、ゴールデンコンビは誕生したことを改めて思った。
文:黒澤百々子 イラスト・山﨑杉夫
アナログレコードの1分間45回転で、中央の円孔が大きいシングルレコード盤をドーナツ盤と呼んでいた。
昭和の歌謡界では、およそ3か月に1枚の頻度で、人気歌手たちは新曲をリリースしていて、新譜の発売日には、学校帰りなどに必ず近所のレコード店に立ち寄っていた。
お目当ての歌手の名前が記されたインデックスから、一枚ずつレコードをめくっていくのが好きだった。ジャケットを見るのも楽しかった。
1980年代に入り、コンパクトディスク(CD)の開発・普及により、アナログレコードは衰退するが、それでもオリジナル曲への愛着もあり、アナログレコードの愛好者は存在し続けた。
近年、レコード復活の兆しがあり、2021年にはアナログレコード専門店が新規に出店されるなど、レコード人気が再燃している気配がある。
ふと口ずさむ歌は、レコードで聴いていた昔のメロディだ。
ジャケット写真を思い出しながら、「コモレバ・コンピレーション・アルバム」の趣で、懐かしい曲の数々を毎週木曜に1曲ずつご紹介する。