23.03.09 update

【わが昭和歌謡はドーナツ盤】 サザンの「チャコの海岸物語」は、「悲しき街角」を歌った飯田久彦へのリスペクトだった

「スタ誕」で合格しデビューした代表格といえば、森昌子、桜田淳子、山口百恵、岩崎宏美、小泉今日子、中森明菜…数え上げればキリがないほど。そしてピンク・レディー(増田恵子、根本美鶴代)の二人にスカウトの手を伸ばしたのが飯田久彦さんだった。ビクターのディレクター時代には、松崎しげる、岩崎宏美、小泉今日子らも担当したが、何と言ってもピンク・レディーを自ら発掘し売り出しに成功させた伝説の男として語られることになった。当初ビクターの上層部は二人をフォークデュオ風のスタイルで売り出そうと考えたらしいが、「ペッパー警部」でデビュー。そしてピンク・レディー7枚目のシングル「サウスポー」がミリオン(100万枚)セラーになった裏話として、作詞・阿久悠、作曲・都倉俊一に、飯田さんは土下座するように頭を下げて作り直してもらったというエピソードがある。二人の歌唱に、強いインパクトを求めたのである。結果、「渚のシンドバッド」、「ウォンテッド」、「UFO」と立て続けに4枚連続のミリオンセラーを記録した。

 ビクターエンタテインメントでは、音楽プロデューサーとして数々の実績を残した飯田さんが同社の専務取締役に就任したのは1999年3月。1961年の歌手デビューを経て1972年、歌手の道をあきらめてビクターにアルバイトとして入社してから27年の歳月が経っていた。同年、ビクターの事業集約など大株主の松下電器産業の意向もあり、テイチク株式会社の社長に抜擢されたのだから男の人生は分からない。実は筆者は、この年の8月、テイチクの社長になった飯田さんを紹介するためにインタビューしている。ピンク・レディー売り出しの裏話や、石原裕次郎を擁してきたテイチクの歴史、所属する売れっ子の演歌歌手・川中美幸、石川さゆり、天童よしみなど面白いエピソードを気さくに語っていただいた。その後、急成長していたエイベックスの依田巽社長(当時)にお引き合わせし、誌上対談が実現。それだけに現在81歳でご壮健の飯田久彦さんをとても呼び捨てにはできないという次第である。

 ちなみに飯田さんには「チャコ」というニックネームがある。〝ヒサヒコ〟が呼びづらく、〝ヒチャヒコ〟から〝チャコ〟と呼ばれるようになったという。ビクターのディレクター時代に出会ったサザンオールスターズの桑田佳祐は、飯田さんの下で「チャコの海岸物語」(1982年、ビクターInvitationレーベル)をリリース。「いとしのエリー」以来の大ヒットとなったが、この〝チャコ〟は、飯田さんのニックネームそのもの。若い頃から桑田佳祐もまた飯田さんのファンだったことから、リスペクトして名付けたという。

文=村澤次郎 イラスト:山﨑杉夫

アナログレコードの1分間45回転で、中央の円孔が大きいシングルレコード盤をドーナツ盤と呼んでいた。
昭和の歌謡界では、およそ3か月に1枚の頻度で、人気歌手たちは新曲をリリースしていて、新譜の発売日には、学校帰りなどに必ず近所のレコード店に立ち寄っていた。
お目当ての歌手の名前が記されたインデックスから、一枚ずつレコードをめくっていくのが好きだった。ジャケットを見るのも楽しかった。
1980年代に入り、コンパクトディスク(CD)の開発・普及により、アナログレコードは衰退するが、それでもオリジナル曲への愛着もあり、アナログレコードの愛好者は存在し続けた。
近年、レコード復活の兆しがあり、2021年にはアナログレコード専門店が新規に出店されるなど、レコード人気が再燃している気配がある。
ふと口ずさむ歌は、レコードで聴いていた昔のメロディだ。
ジャケット写真を思い出しながら、「コモレバ・コンピレーション・アルバム」の趣で、懐かしい曲の数々を毎週木曜に1曲ずつご紹介する。

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