最近ボクは、同い年の作詞作曲家でありシンガーソングライターの、すぎもとまさと(杉本眞人)が歌う楽曲にはまっている。「吾亦紅」で亡き母を想い、「冬隣」や「Tokyoに雪が降る」で若き日の恋慕の人を想い涙する爺さんなのである。(歌手名はひらがな、作詞作曲家は漢字、表記を使い分けているフシがある)
杉本眞人は、ちあきなおみ(かもめの街、冬隣、紅い花など)、八代亜紀(ほんね)、小柳ルミ子(お久しぶりね)、五木ひろし(それは…黄昏)ら当代の流行歌手に多くの楽曲を提供しているが、アコースティックギターの爪弾きと彼の絞り出すような嗄れた声に惹かれている中高年ファンは多いはずだ。「街の灯り」(作詞・阿久悠、作曲・浜圭介)は多くの流行歌手がカバーしているが、すぎもとまさともまた最新作のアルバム『薄荷抄』に「昭和最後の秋のこと」とともに、〝すぎもと節〟で歌い上げている。久しぶりにこの楽曲を耳にして、わが二十代の苦い思い出がよぎったという次第。
田辺昭知率いる超人気GS〈ザ・スパイダース〉のボーカルだった堺正章は、1970年グループ解散後ソロデビューし、いきなり「さらば恋人」が大ヒット。「街の灯り」はその余勢を駆って1973年(昭和48)にリリースされ、この年の日本レコード大賞作曲賞受賞、暮のNHK第24回紅白歌合戦にも歌唱している。ちなみに1973年は、新御三家(西城秀樹、郷ひろみ、野口五郎)が牽引しながら、花の中三トリオ(森昌子、桜田淳子、山口百恵)、麻丘めぐみ、アグネス・チャン、あべ静江などアイドル歌手のデビューも多く、相次ぐ流行歌のヒットをよそに、フォークソングの新潮流、井上陽水、かぐや姫、チューリップなども台頭してきていた。これらの歌手や楽曲それぞれが、人々の胸の内にあって今でも懐かしくよみがえるのは、歌謡曲こそ人生の肥しであり心を潤してくれるからで、昭和世代の宝物といえるヒット曲豊作の年なのである。中でも「街の灯り」はロングセラーとなって今でもカバーされるほど、懐かしさが沁みる楽曲なのだろう。