◇今でも色褪せない『それいゆ』のファッション
その中でも、やはり中原さんデザインのワンピースやブラウスのエレガントな雰囲気に、読者はひきつけられたのではないだろうか。展示されていたどのワンピースも、少しも古さを感じさせなかった。その中で是非着たいと思う服があった。1951年から52年にかけて長く滞在したパリでの生活から、インスピレーションを得たデザインのような気がした。

『それいゆ』は、1946年(昭和21)8月に発刊。まだ東京中が焼け野原に近いころだ。戦後すべてが貧困で夢を忘れた女性たちが、それを補えるような雑誌を作りたいと中原は考えた。読者が読んでいるうちに、いつの間にか本当の意味で美しい暮らしを知り、優しく賢い女性になっていくことを目指して誕生した。内容はお化粧や髪型、ファッションのこと、楽しく無駄なく生活するための工夫や恋愛、結婚、家族、生きる姿勢など現代の女性誌の内容に通ずるものだった。
雑誌『それいゆ』のコーナーに、私はうっとりした。『ひまわり』とほぼ同時代の戦後まもないころに創刊された『それいゆ』は、昭和35年の廃刊迄、日本女性のファッション中心にインテリア、手芸などさまざまなジャンルに美しい波紋を投げかけてきたという。
「いいお洋服ね」
中原さんと同じようにパリにあこがれていた母の声が、そのワンピースの背後から聞こえてくる心地がした。

中原のスタイル画は、西洋風の顔立ちをしたモデルにさまざまな衣装をまとわせ、その衣服のイメージは細部にいたるまで明快に描かれている。
「あなたの家に美しいカーテンがゆれて、清潔なテーブルクロスが部屋をいろどっているかどうか、そんな部屋に住んでいるかどうかで、あなたには目に見えない雰囲気が身について、美しい印象を人にあたえるのだということも知っていて下さい」 中原淳一(会場に吊るされた短冊の言葉より)

太田 治子(おおた はるこ)
神奈川県小田原市生まれ。明治学院大学文学部卒業。76~ 79年NHK「日曜美術館」の初代司会アシスタントを務める。86年『心映えの記』で第一回坪田譲治文学賞を受賞。著書に『夢さめみれば一日本近代洋画の父・浅井忠』(朝日新聞出版)、『湘南幻想美術館~湘南の名画から紡ぐストーリー』(かまくら春秋社)他多数。