24.12.23 update

松田聖子デビューから45年、伝説のプロデューサー若松宗雄が語る誕生秘話〈わが昭和歌謡はドーナツ盤〉特別企画

私でなければ松田聖子をデビューさせることはできなかった

 松田聖子のレコード・デビューは80年4月1日で、少女の声に出会ってから約2年の月日、“TAKE IT EASY(気楽にいこう)”の言葉を胸に、若松さんは、ひたすら自身の直感にある種の確信をもって突き進み、目の前の高い壁を乗り越えていく。何が、そこまで若松さんを動かしたのだろうか。

「一つはソニーの制作セクションの責任者で、私の一存で物事を進めることができたということ。それと、松田聖子の声を初めて聴いて、福岡営業所で本人に初めて会ったときの印象で、彼女は誰がどう言おうと絶対に売れるなという確信を得たこと。その確信があったので、周りから否定されても、彼女の良さがわからないんだなというだけで、なぜわからないの、というふうには思いませんでした。まあ、できればわかってもらいたいなというのはありましたが、心がくじけることはありませんでしたね。同時に、プロデューサーになって、なかなか結果が出せていないなという私自身がプロデューサーとしての土壇場を感じていたので、やり残しのない、思い残しのないよう自分自身に結果を出したいという思いが強かったと思います。だから、聖子を見る目も、周りの言葉に影響されないくらい敏感で鋭かったのだと思います」

 そして、当時を振り返り「私でなければ松田聖子をデビューさせることはできなかった。なぜなら、私だけが彼女の可能性を信じ、見抜いていたから」と言う。

 さらに、「あのタイミングでの私と聖子だったからこそ、〝なんとしてもデビューさせたい〟〝なんとしてもデビューしたい〟という互いの想いが呼び合った、まさに必然の出会いだったと思う」と。

 福岡時代に松田聖子のボイストレーニングを若松さんから委ねられた平尾昌晃は、「プロになったら絶対成功するという強い意志を松田聖子本人からいつも感じていた」と言っている。

 「平尾さんからは聖子の声を聴いて、彼女はすごいね、並じゃないねと、言っていただきました」と、その資質を見抜く人もいた。プロフェッショナルのお墨付きは心強かったことだろう。

 父親とも直接会って、歌手になりたいという松田聖子の揺るがぬ思い、そして若松さん自身の思いを誠意をもって伝えることで説得に努め、ついには父親からも信頼を得るにいたり承諾をとりつけた。79年の夏にはプロダクションもサンミュージックへの所属が決まり、松田聖子が上京する。そして若松さんの確信通り、〝潮目〟が動き出すのだ。

 サンミュージックとしては、レコード・デビューは早くとも80年の秋以降と考えていたが、若松さんは80年4月1日と、デビュー日を宣言し実現させる。デビューの前年から、ラジオやドラマのレギュラーを務め、80年初めからはNHK「レッツゴーヤング」のレギュラーも決まっていく。「聖子にはチャンスを引き寄せる自身の明るさやタレント性があった」と若松さんは言い、松田聖子は自分の夢に意識を集中させていく。「大切なのは、聖子はほかの誰にも似ていなかったということである。山口百恵がそうであったように」とも。 

 

▲1980年4月1日にリリースされた記念すべきデビュー・シングル「裸足の季節」。作詞を三浦徳子、作曲を小田裕一郎、編曲を信田かずおが手がけた。7月3日放送のTBS系「ザ・ベストテン」では「今週のスポットライト」コーナーで紹介されている。資生堂エクボ洗顔フォームのCMソングにも起用され、オリコンシングルチャート最高位12位、売上も30万枚以上のセールスというヒットだった。

1 2 3 4

新着記事

  • 2026.01.29
    第19回『東宝映画スタア☆パレード』三國連太郎 ひ...

    文=高田雅彦

  • 2026.01.29
    第69回【萩原朔美 スマホ散歩】風の日の記憶

    強く冷たい風を撮る

  • 2026.01.29
    松岡美術館「笑い滴る 春と夏の日本画名品選」観賞券

    応募〆切:2月27日(金)

  • 2026.01.29
    大ヒットドラマが映画『五十年目の俺たちの旅』となっ...

    中村雅俊「俺たちの旅」

  • 2026.01.27
    徳川慶喜、渋沢栄一ほか多くの歴史人を訪ねる谷中散歩...

    谷中さんぽを楽しむ

  • 2026.01.27
    【お出かけ情報】小田急多摩センター駅が新たにサンリ...

    小田急多摩センター駅がリニューアル

  • 2026.01.26
    12年ぶりの共演となる当世を代表する俳優、藤山直美...

    2月5日(木)~24日(火)

  • 2026.01.26
    【箱根びと訪問】伝統と格式を守りながらイノベーショ...

    小田急山のホテル 小山哲史支配人

  • 2026.01.22
    【お出かけ情報】いちご狩り体験がいよいよシーズン!...

    京成沿線いちご狩り

  • 2026.01.22
    「とんでとんで」「まわってまわって」と日本中に広ま...

    円広志「夢想花」

映画は死なず

特集 special feature  »

<特集>今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が語る「三屋清左衛門残日録」~時代劇にはまだまだ未来がある~

特集 <特集>今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が...

藤沢周平原作時代劇「三屋清左衛門残目録」の章

松田聖子デビューから45年、伝説のプロデューサー若松宗雄が語る誕生秘話〈わが昭和歌謡はドーナツ盤〉特別企画

特集 松田聖子デビューから45年、伝説のプロデューサー若松...

〈わが昭和歌謡はドーナツ盤〉特別企画

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!