◆特集コラム 劇団俳優座80年の役者たち Vol.3◆
2024年2月10日に創立80周年を迎えた「劇団俳優座」。劇団俳優座で活躍した名優たちをクローズアップしてお届けする。第3回は創設者の一人、小沢栄太郎。
小沢栄太郎(1909年3月27日~1988年4月23日)。
東京の西洋家具店の一人息子として生まれた小沢栄太郎は、生母が駆け落ちをしていなくなった後、継母に育てられた。中学に入ると胸を病み3年間の闘病生活を送る。そこで多くの文学書を読むうち戯曲や芝居に興味をもった小沢は築地小劇場に通うようになったのである。
戦前の東京左翼劇場、新協劇団などを経て、千田是也、東野英治郎らと俳優座を結成し、主軸となる俳優として活躍したが、その一方で映画にも出演するようにもなった。『さくら音頭』でデビュー以来300本以上の出演作がある。特に憎々しい悪役の演技で定評があり、日本映画黄金期の欠かせない俳優である。
1946年木下惠介監督映画『大曾根家の朝』では第1回毎日映画コンクールで演技賞を受賞している。ちなみに東野英治郎も出演していた。小沢の個性ある芝居は、『雨月物語』『白い巨塔』『華麗なる一族』『不毛地帯』『悪党』『犬神家の一族』といった映画も印象深い。また、NHK大河ドラマ「新・平家物語」での信西、「元禄太平記」での吉良上野介などの憎々しい役は、余人をもって代えがたい小沢栄太郎の真骨頂といった感じで、今でもしっかりと記憶に刻まれている。眞船豊作・千田是也演出の84年の舞台『遁走譜』では紀伊國屋演劇賞・個人賞を受賞した。
小沢は65年に仲代達矢主役の『ハムレット』ではクローディアスを演じていたのも記憶に残る。51年、60年、63年の『桜の園』ではロパーピンを演じている。
俳優として60年のキャリアの小沢は、芝居が好きなように、文章を書くことも好きだった。著書に『パリの銭湯』『演出記録』『先祖はモリエール』などがある。