散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第55回 2024年11月27日
面白い。今一番興味あるのがカバンの装飾だ。持ち物に衣服を着せる感覚なのか、趣味を知らせるサインなのか、主張なのか、メイクアップなのか。とにかく、表現行為のように見える。私も真似してカバンに何かくっつけようとしたけれど、携帯したいものが、悲しいかな思いつかない。沢山グッズをぶら下げている人が羨ましい。
10代の頃、部屋にアイドルの写真をベタベタ貼り付けたり、地名が描かれた三角のペナントを大量に飾っていた友人がいた。
今は、そんな行為が部屋から抜け出して、外に溢れているのだ。持ち歩くカバンは飾るキャンバスとしてサイズが最適なのかも知れない。
今後、カバンの画像を数年間採取して、分析しようと思っている。興味津々の考現学。何が分かるか楽しみである。
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長、金沢美術工芸大学客員教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。