人生百年時代――とはいえ、老いさらばえて100歳を迎えたくはない。
健康で生気みなぎるような日々を過ごせてこそ、ナイス・エイジングだ!
西洋医学だけでなく東洋医学、ホメオパシー、代替医療まで、
人間を丸ごととらえるホリスティック医学でガン治療を諦めない医師、
帯津良一の養生訓は、「こころの深奥に〝ときめき〟あれ」と説く。
連載16回
〈アロマハグ〉のお色気体験
文=帯津良一
先日の金曜日の夕刻、朝からの外来診療が終って、自室で一息入れていると、とんとんと扉をノックする音、
「どうぞ!」
と。入って来たのは楚楚とした中年の女性。
はて? 何方(どなた)でしたっけ?
この人の素性が分からず、一瞬の空白状態。
「……アロマセラピストのYです。この度退職することになりました。20年間、本当にお世話になりました……」
と来たものです。
そして、本当に久し振りにアロマテラピーを思い出しました。うちの病院でのアロマテラピーの歴史は古く、1987年秋の日本ホリスティック医学協会の設立時に遡(さかのぼ)ります。病院としてもホリスティック医学を標榜した以上、駆使できる代替医療を集めなくてはなりません。それまでが中西医結合のがん治療を旗印にかかげた病院でしたので、中国医学には事欠きません。用意万端です。
その中国医学のあと、真っ先にやって来たのがアロマテラピーだったのです。それはアロマの専門家である林真一郎(はやし しんいちろう)さんとすでに交流があったからなのです。ここで、『お医者さんがすすめる代替療法』(帯津良一総合監修、学習研究社)のなかで林真一郎さんが書いているアロマテラピーの章の一部を紹介したいと思います。
◆マッサージと香りで心身を深く癒す
植物から抽出した天然の精油(エッセンシャル・オイル)を用いた療法で、精油を皮膚から吸収させるアロマテラピー・トリートメントと鼻から香りを吸入する芳香浴のふたつの方法がある。
◆心理作用+薬理作用のダブル効果
嗅覚には人の心理に深く働きかける作用があり、アロマテラピーではそれを心身の癒しに応用する。また、皮膚から吸収されて血中に入った精油の成分は薬理作用を発揮するといわれ、現在は医学的な研究が進められている。
◆ストレスで疲れた心を解きほぐす
精油が共通してもつ効果としては、ストレス緩和や気分のリフレッシュ作用。それによって健康維持や病気予防に一定の役割を果たし、心身症の改善にも役立つと考えられる。また、不安や不眠症、風邪予防、頭痛、筋肉の緊張・痛み、月経前症候群や月経痛、更年期障害などにもよい影響をおよぼすといわれている。
◆女性を中心に広く受け入れられている
日本では1980年代なかばから普及しはじめ、現在では3000名以上のアロマテラピストが活躍している。
と。
彼女は私の著書を差し出して、サインを要望。サインが済むと、ハグを要望。わが自室で初めてのハグ。凄い色気だ! その後一日中ほのぼのとした気持ちに包まれたものです。
おびつ りょういち
1936年埼玉県川越市生まれ。東京大学医学部卒業、医学博士。東京大学医学部第三外科に入局し、その後、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。そして2004年には、池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設現在に至る。日本ホリスティック医学協会名誉会長、日本ホメオパシー医学会理事長著書も「代替療法はなぜ効くのか?」「健康問答」「ホリスティック養生訓」など多数あり。その数は100冊を超える。現在も全国で講演活動を行っている。講演スケジュールなどは、https://www.obitsusankei.or.jp/をご覧ください。