new 25.03.14 update

室町時代から受け継ぐ、小田原鋳物のブランドを高める 

柏木 照之

株式会社 柏木美術鋳物研究所 代表取締役




「鳴物(なりもの)」に特化して、小田原唯一の鋳物業を営む


 柏木美術鋳物研究所では、小田原鋳物の伝統を受け継ぎ、現代生活にマッチした鳴物や花器、楽器、仏具、文具などを制作しています。小田原鋳物は、室町時代に遡ります。北条早雲が小田原城を奪取し相模国を平定、二代氏綱の時代に城下町が整えられると、日用品としての鍋、釜などの「鋳物」が必要とされました。肥前国唐津の大久保氏が佐倉藩を経て小田原城主になると、従属した柏木家も小田原鍋町に移り住み、1686年(江戸時代、貞享3年)から小田原で鋳物業を営んでいます。
 明治以降他の地域で鋳物の大量生産が可能になると、地場での需要が減り、もともと得意だった鳴物に特化してきました。風鈴の涼やかな音色や、仏壇に置かれた「おりん」を鳴らした時の、「りーん」という澄み切った余韻のある音がでる鳴物にこだわっています。

 空間に凛とした響きが冴えわたる「風鈴」や「おりん」の秘密は、「砂張」にあります。「砂張」は、もともとは「沙波理」と書き、シルクロードを渡って奈良時代に入ってきました。正倉院御物の中にも「沙波理」製の仏具や食器がありますが、茶道具として取り入れられるようになると「砂張」と書くようになったようです。「砂張」は錫を含んでいるため、硬くて脆く鋳造や加工、色付けなどは非常に難しく、制作には高度な熟練の技術が必要とされます。しかしその分音色の優れた製品に仕上がります。そして使い込むほど音も良くなるといわれています。

 例えば黒澤明監督の映画『赤ひげ』(1969)の浅草寺のシーンでは、無数の風鈴が一斉に鳴り響くシーンがありますが、この場面をより印象深いものにするべく、最高の音色を持つ風鈴を探し求めた黒澤監督に使われたのが、当社の風鈴でした。(工房にはその場面写真が飾られている)

▲炉の中で炎が燃えたぎる作業現場は、熱さとともに緊張感もピークになる。溶けた金属を鋳型に流し込み、 金属は鋳型の中に充填され、冷え固まり製品の形状になる。



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