萩原朔美のスマホ散歩
散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第4回 2020年9月4日
各家に必ずあった郵便受け。それが、今や消滅しそうなのだ。多くの郵便受けが、ガムテープで口を塞がれている。考えてみたら、私も手紙を書かなくなった。年賀状もやめてしまった。メールやラインがハガキにとって変わった。新聞も携帯で読む。郵便受けには、チラシとDMばかり。錆びていく郵便受けの隣りには、真新しい宅配ボックスが新設された。
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長を務める。