20.12.28 update

コロナ禍の一年、そしてこれから

塚本多美子

(ホテル はつはな 支配人)


女性にやさしい宿を標榜して

「ホテルはつはな」のある奥湯本は、賑やかな箱根湯本駅前から旧街道を、車で10分ほどのぼった奥まった静謐なエリアで、まさに〝奥座敷〟のような雰囲気があります。開業は、1993(平成5)年4月1日、今年で27年になりました。「はつはな」の由来は、開業した4月頃には玄関前のソメイヨシノが咲き誇り、続いて湯坂山の山桜が咲き、最も華やぐ季節で、「その年最初に咲く桜」を意味する「はつはな」と名付けられたのです。開業当時は、芦ノ湖畔の「山のホテル」の和風別館という位置づけでしたが、命名にふさわしい「女性にやさしい宿」というコンセプトを打ち出して今日に至っています。ホテルの合理性と和風旅館のおもてなしでごひいき様を増やしてきたのです。

 男性のお客様にはお叱りを受けてしまいそうですが、源泉掛け流しの名湯「美人の湯」が代名詞になっており、特に女性のお客様に好評です。アルカリ性の泉質は美肌効果が抜群で、女性専用のスパ「やまざくら」には、露天風呂や寝湯、檜風呂の他に、本格的なリラクゼーションサロンも完備しています。上の階の大浴場からは、スロープカーで降りていただくこともできますので、足のご不自由なご年配の方も安心して移動できます。四季折々の素材を生かした美しく、美味な懐石料理も自慢の一つですが、さらに女性に喜ばれる施設として甘味処があります。お抹茶をいただきながら、和風スイーツが食べ放題。そんなところも女性に人気の宿という定評をいただいているのかもしれません。

ホテル勤務30年余に前代未聞の体験

 私は観光業に興味があって小田急リゾーツに入社し、これまで箱根ハイランドホテル、山のホテル、相模大野のホテルセンチュリーの開業などにも携わってきました。直前まで山のホテルの支配人を2年間ほどやり、2020年4月、初めてはつはなに赴任しました。年齢が分かってしまいますが(笑)、新潟生れの私がずっと箱根山の懐に抱かれて30年余り経ちます。しかし、赴任早々、前代未聞の体験することになったのです。新型コロナウイルスの騒ぎの真っ只中で、ホテルは対策に大わらわでした。緊急事態宣言の発出があり、多くの皆様が体験されたように、箱根にとってもかつてない状況でした。静まり返る箱根湯本駅、閑散としたお客様のいないはつはなの館内は嘘のような光景で、美しい桜も、素晴らしい眺めの湯坂山の新緑もご覧いただけず、「どうぞ来てください」とは言えませんでした。

 6月になって営業が再開し、スタッフのいきいきとお客様を迎える姿をとても嬉しく思ったものです。「GO TO トラベル」でさらににぎわいが戻って来て、紅葉の美しい11月は忙しい毎日でした。私もお客様のお荷物を運んだり客室にご案内したり。ところが今度はキャンペーンの中止で、年末年始のお客様のキャンセルの対応と、これまでにない年になってしまいました。はつはなを常宿にしてくださるお客様も多く、「行きたいんだけど、ごめんなさい、頑張ってね」というお電話をいただくと、とても励まされる想いがします。

 今の仕事に携わって30年近くになりますが、箱根はロマンスカーを使えば新宿から1時間半くらいで着けるリゾートですから、上質かつハイエンドなサービスをお求めになるお客様が多く、それだけに迎えるホテルのおもてなしの気持ちが最も大切です。私たちホテル側も良質な本物のサービスを提供しなければなりません。お客様とホテルの相乗効果によって、上質な空間を創り出していくのだと思います。ですから、私たちは常に創意工夫してレベルアップしていかなければと考えています。

 コロナ禍の終息は見えません。けれどもソメイヨシノの咲く季節、「はつはなに是非いらっしゃってください」と自信をもって言えるよう万全の備えをして、寒い季節を乗り切りたいと思っています。

人気のスパ「やまざくら」
塚本多美子支配人は箱根に通って30年を超えるホテル業のベテランだが、「ホテルはつはな」は初めての勤務。
撮影:2020年12月12日

ホテルはつはな
神奈川県足柄下郡箱根町須雲川20-1
℡:0460-85-7321 FAX:0460-85-7322


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