22.09.15 update

ファンの間では「木綿のハンカチーフ」を凌ぐとの声もあるセプテンバーソングの定番「九月の雨」

アナログレコードの1分間45回転で、中央の円孔が大きいシングルレコード盤をドーナツ盤と呼んでいた。
昭和の歌謡界では、およそ3か月に1枚の頻度で、人気歌手たちは新曲をリリースしていて、新譜の発売日には、学校帰りなどに必ず近所のレコード店に立ち寄っていた。
お目当ての歌手の名前が記されたインデックスから、一枚ずつレコードをめくっていくのが好きだった。ジャケットを見るのも楽しかった。
1980年代に入り、コンパクトディスク(CD)の開発・普及により、アナログレコードは衰退するが、それでもオリジナル曲への愛着もあり、アナログレコードの愛好者は存在し続けた。
近年、レコード復活の兆しがあり、2021年にはアナログレコード専門店が新規に出店されるなど、レコード人気が再燃している気配がある。
ふと口ずさむ歌は、レコードで聴いていた昔のメロディだ。
ジャケット写真を思い出しながら、「コモレバ・コンピレーション・アルバム」の趣で、懐かしい曲の数々を毎週木曜に1曲ずつご紹介する。

 9月になると、無性に聴きたくなる歌がある。このシリーズでも紹介したオフコースの「秋の気配」や舟木一夫の「高原のお嬢さん」、それに、トワ・エ・モワの「誰もいない海」、岩崎宏美の「思秋期」、南沙織の「色づく町」、高田みづえの「秋冬」、アリスの「秋止符」、竹内まりやの「SEPTEMBER」などがそうである。秋をテーマにコンピレーションアルバムを作るとしたら、いずれの曲も入れたい。そして、僕にとっての極めつけは太田裕美が歌った「九月の雨」である。

 「九月の雨」は1977年9月にリリースされた太田裕美9枚目のシングルで、デビュー曲の「雨だれ」や「木綿のハンカチーフ」「赤いハイヒール」「しあわせ未満」といった曲とは趣の違う、歌謡曲っぽい色合いの濃い、秋を感じる切ないセプテンバーソングである。作詞は松本隆、作・編曲は筒美京平。太田裕美といえば大ヒット曲「木綿のハンカチーフ」を代表曲に挙げる人が多いが、ファンの間では、この曲を太田裕美の最高傑作に挙げる人も少なくない。

イラスト:山﨑杉夫

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