散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第39回 2023年7月19日
道路に引かれた白線を撮影して、携帯画面に並べたら、抽象絵画のような画像になった。一枚一枚は、何の変哲もない路面。それを集合させると、何故か表現に見える。意図しない画面の組み合わせが、意図された画面に変容するから面白い。
昨年、個展をやった京橋の画廊の大きなガラス窓に、この白線画面を貼ってみた。太陽が当たるとステンドグラスのようになる。
もう一つは、この白線画面を、ミュージシャンのかたが、自身のCDのビジュアルに使ってくれた。オシャレだ。垂直に立った路面と、手のひらに乗った路面。次は編んで絨毯にでもして、また地面に戻しますかね。
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長、金沢美術工芸大学客員教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。