翌64年公開の『続・髙校三年生』にも、姿美千子は主役といった役どころで出演している。やはり明朗で快活な女子高生である。相手役も同じく倉石功。舟木は高校生でなく、倉石の弟が憧れる兄貴的な存在の工員という役柄だった。その後も、市川雷蔵、勝新太郎、田宮二郎といった男優たちが主演を務める映画に出演しているが、大映がセクシー路線に転じるようになり役に恵まれなくなり68年には大映を退社した。それ以降はテレビドラマに活動の場を移し、井上靖原作「氷壁」、倉本聰脚本「君は海を見たか」、舟木一夫の相手役として出演した単発ドラマ時代の東芝日曜劇場「川止め」などが記憶に残るものの、71年には当時読売ジャイアンツの投手だった倉田誠(2021年死去)と結婚して、あっさりと引退してしまった。姿美千子の妹も日活専属の女優で、橘和子の芸名で映画『嵐を呼ぶ男』、『星よ嘆くな 勝利の男』などに出ていたが、姿美千子より一足先に、やはり読売ジャイアンツの投手だった高橋一三(2015年死去)と結婚し69年に引退していた。
10年くらいの短い女優人生だったが、デビュー翌年の62年には倍賞千恵子、浜美枝、浜田光夫、千葉真一、山本圭らと共に、日本映画テレビプロデューサー協会が選定するエランドール賞新人賞に輝いている。ちなみに2024年度の受賞者は、磯村勇斗、今田美桜、眞栄田郷敦、小芝風花、目黒蓮、堀田真由である。また、雑誌「明星」の「映画スター人気投票・女優部門」では63年から65年まで3年連続でベスト10入りし、雑誌「近代映画」の「オールスター投票・女優部門」でも、63年から67年まで5年連続でベスト10入りしている。64年と65年には3位にランキングされていた。芸能雑誌のグラビアにも毎月のように登場していた。64年のマルベル堂のプロマイド売上女性部門では第10位だった。倉石功が、若手俳優たちが颯爽と活躍している日活に入りたかった、と言っていたと聞くが、もし、姿美千子が日活所属の女優であったなら、また違った女優人生を歩んでいたのかもしれない、などとも想像してみたくなる。高橋惠子(当時関根恵子)も、松坂慶子も、デビュー当時は大映の所属だったことを思い出す。姿美千子もまた、昭和の芸能史に名を残す忘れられない女優の一人である。
文=渋村 徹
※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。
マルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。2021年には創業100年を迎えた。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。
マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F
読者の皆様へ
あなたが心をときめかせ、夢中になった、プロマイドを買うほどに熱中した昭和の俳優や歌手を教えてください。コメントを添えていただけますと嬉しいです。もちろん、ここでご紹介するスターたちに対するコメントも大歓迎です。