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特別寄稿 役者を生きるために生まれてきた男の12月13日、93歳の誕生日に捧げる讃歌 仲代達矢 (俳優)

 ずっと気になっていたぼくは、2年前に仲代達矢をインタビューした際にこの疑問をぶつけた。

「そうですか。丹波さんがそう言ってましたか。あまり覚えてないけど、丹波さんが言うなら、そうでしょう。いかにも丹波さんらしい話じゃないですか。私はいろんな役者と共演したけど、一番好きなのが丹波さんです。おおらかで、懐が深く、人を喜ばせるユーモアがある。演技のスケールも大きい。撮影前にセリフを覚えなくても、現場で記憶してなんとかなっちゃうんだから、大したもんです」

 仲代も丹波に劣らず演技のスケールは大きい。そして、人としてのスケールも大きな役者だった。

『御用金』では自分とのトラブルで途中降板した三船敏郎の代役を旧知の仲の萬屋錦之介に依頼し、快諾を得ている。もし撮影中止になったら、自宅を売却して賠償金を払う覚悟だった。小林正樹監督の『怪談』では撮影途中に資金難に陥ると、家にあった現金と預金通帳をすべて提供して撮影続行に協力した。ご存じ『影武者』では途中降板した勝新太郎の代役を務め、黒澤明の窮地を救っている。映画や舞台のためなら、すべてを投げ出す腹のくくりようは半端ではなかった。

 ぼくは仲代達矢は役者を生きるために生まれてきた人だと思っている。彫りの深い顔。エネルギッシュな声。演技に対する並外れた集中力。そして彫像のようなたたずまい。どこにいても目立った。スクリーンの中はもちろん、舞台の稽古場の隅っこにいても、仲代達矢の存在は光った。目がまたいい。強く澄んだ目は凄みだけでなく、どこか人懐っこさを感じさせる瞬間があり、豪快だが孤独な男が似合った。

 存命なら12月13日で93歳。演技に捧げ尽くした生涯だった。

 文=米谷紳之介(文筆家、編集者)


※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。

マルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。2021年には創業100年を迎えた。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。


マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F


読者の皆様へ
あなたが心をときめかせ、夢中になった、プロマイドを買うほどに熱中した昭和の俳優や歌手を教えてください。コメントを添えていただけますと嬉しいです。もちろん、ここでご紹介するスターたちに対するコメントも大歓迎です。


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