プロマイドで綴る わが心の昭和アイドル&スター
大スター、名俳優ということで語られることがない人たちかもしれないが、
青春の日々に密かに胸をこがし、心をときめかせた私だけのアイドルやスターたちがいる。
今でも当時の映画を観たり、歌声を聴くと、憧れの俳優や歌手たちの面影が浮かび、懐かしい青春の日々がよみがえる。
プロマイドの中で永遠に輝き続ける昭和の〝わが青春のアイドル〟たちよ、今ひとたび。
企画協力・写真提供:マルベル堂
仲代達矢が映画の代表作を問われて必ず挙げたのが、小林正樹監督の『切腹』である。1962年、仲代が31歳のときの映画だ。切腹という儀式を通して武士社会の持つ矛盾や偽善を告発した、小林正樹ならではの骨太の時代劇。仲代はこの作品について「演出、撮影、脚本、キャスト……すべてが素晴らしい」と語る。
ラストの決闘では刀の重みや怖さを表現したいという小林正樹の要望で本身(真剣)が用いられた。仲代の相手は丹波哲郎。リハーサルでは、殺陣の名手でもあった丹波に「もっとスレスレに斬り込んでこい」と言われたのだが、仲代は恐怖感を払拭できず、本番前夜は眠れなかったという。それでも出来上がった映像に文字通り「真剣勝負」の緊迫感が漲るのは、両者の間に確かな信頼関係があったからだ。

『切腹』の6年後、五社英雄監督の『御用金』で、仲代は再び丹波と共演する。2人に萬屋錦之介(当時・中村錦之助)が加わり、3大スター共演と銘打たれた大作時代劇だ。撮影中の面白いエピソードがある。
ある晩、3人で風呂に入り、日本で一番いい役者は誰かという話になった。高らかに言い放ったのは丹波だった。
「決まっているじゃないか。俺だよ。君たちは俺に次いで、2番目、3番目くらいにはなれるかもしれないな」
仲代と萬屋は笑って頷くだけだった。
これは20年ほど前、丹波哲郎の本(『オーラの運命』)を書くにあたり、ご本人から聞いた話である。しかし、本当の話なのか。はたまた丹波らしいホラ話なのか。










