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郷土の歴史と天文を学べる博物館がある、八代将軍徳川吉宗に由来する「お花茶屋」駅に降りてみた

夏まつりで活気づくお花茶屋の町

 うだるような暑さの中、冷房の効いた京成電車に乗ってホッと一息ついていると、ビルの谷間からスカイツリーが見え隠れし、荒川を越えるとまもなく堀切菖蒲園駅、そしてお花茶屋駅に停まった。「お花茶屋駅」は京成上野駅から各駅停車に乗って6つ目、乗車時間は20分弱である。なかなか風情のある駅名だが、歴史をたどってみると江戸時代に遡る。八代将軍徳川吉宗が鷹狩りにこの地を訪れたが途中で腹痛をおこし茶屋で休ませてもらった。その時看病した娘の名前が「お花」さんで、感謝した吉宗公により娘の名前を取ってそのお茶屋は「お花茶屋」と命名された。それが駅名となり、開業は1931年(昭和6)である。

 改札口を出て北口の階段を降りると、葛飾区白鳥という地名が目に入る。この地区にはかつて白鳥沼という大きな沼があり、大正時代のはじめまでたくさんの鴨や白鳥が生息していた。戦後開発が進み1966年(昭和41)に、いくつかの町が再編され葛飾区白鳥の地名となった。駅周辺は道幅も広く都内ではよく見かける風景だが、コンビニエンスストアやドラックストア、ファーストフードのお店が軒を連ねる。町のメインストリートの一つである「プロムナードお花茶屋」は、駅北口から、共栄学園中学高等学校付近まで500mほどの商店街だが、惣菜屋、果物屋、蕎麦屋などチェーン店ではないお店を見つけると、心が安らぐ。アーケードのアーチには、「8月1日 2日 3日 お花茶屋ふるさとまつり」の垂れ幕が下がり、夏まつりに備えて商店街も活気づいているようだ。

 歩いて4、5分の住宅街にあるお花茶屋公園には、四方八方に提灯がぶら下がっていた。「お花茶屋ふるさとまつり」は、田舎のない人でも楽しめるようにと敢えて「ふるさとまつり」と名づけられ、今年は61回目の開催だ。まさにこの地域の夏の風物詩だろう。納涼盆踊り大会や祝い組太鼓ショー、地元の中学生による吹奏楽演奏、屋台も出れば、金魚すくいもある。地域の絆が深まる行事が今も続いているところが、この町の親しみやすさなのだろう。

 駅の東側には、江戸時代農業用水として曳舟川が引かれた。曳舟川は綱をかけた小舟を、川岸から引いたことに由来する名称だが、昭和30年代後半までは、小魚などが生息している川で、昭和20年代は、フナ釣りの名所だった。しかし高度成長に伴い川が汚れ、区は川を埋めたて、人工的な水の流れを作り、整備してできたのが、「曳舟川親水公園」である。亀有から四つ木にかけて南北3㎞の公園には、水遊びの広場が3つほどあり、夏には期間限定で入水できる。鷹狩の殿様の銅像や舟を曳く男の銅像が当時をしのばせ、公園内にはウメ、リンゴ、アンズ、ザクロ、カリン、ミカン、ヤマモモの7種の果樹の樹や、わずかなスペースだが、稲も植えられていた。

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