代官山 蔦屋書店
並ぶ3棟を2階渡り廊下でつなげた軽快な設計、Tを繰り返したスマートなデザインは、アストリッド・クライン氏による。同社が〝プレミアエイジ〟と呼ぶ団塊世代前後をターゲットとした店づくりをめざし、2011 年12 月5 日にオープン。それぞれのジャンルに、知識と経験豊かなコンシェルジュがいて、商品の提案や説明を行うため常駐しているのが特徴だ。2階ラウンジ「Anjin」の鴻崎正武氏の壁面アートは優雅で、音楽に関しても、ジャズ、クラシック、ロック、ポップスと圧倒的な品ぞろえ。一日いても楽しめる、何度でも来たくなる本屋だ。
〔住〕渋谷区猿楽町17-5 〔問〕03-3770-2525
COW BOOKS
2002 年9 月14 日にオープンの「COW BOOKS」は、文筆家の松浦弥太郎氏がセレクションをした和洋古書が並ぶ。1960 ~80 年代に出版された古書が中心だが、新刊も扱う。「everything for the freedom. COW BOOKS」という入り口に掲げられたメッセージのように、世界中の素晴らしい本を通して、「自由」というあかりを集めることをめざしている。立原正秋の『男性的人生論』、古今亭志ん朝の『びんぼう自慢』、吉行淳之介の『街角のタバコ屋までの旅』など上段に陳列された随筆が店のポリシーを伝える。ガラス戸棚には、猪熊弦一郎の「画家のおもちゃ箱」や「バー・ラジオのカクテルブック」等々古書とは思えない丁寧な扱いだ。店内には長いテーブルがあり京都六曜社の自家焙煎豆を使用したコーヒーを飲みながらゆっくり過ごすこともでき、オリジナルグッズのTシャツやバッグも販売している。開店当時から携わる吉田茂さんは、「お店に入って来た人が、来た時よりも穏やかな顔になって帰られる、それが喜びです」と、話してくれた。
〔住〕目黒区青葉台1-14-1 コーポ青葉台♯103 [問]03-5459-1747
かもめブックス
神楽坂で長年続いた本屋「文鳥堂」が、2014年4 月に突然閉店。近くで校正・校閲の会社「鷗来堂」を経営する柳下恭平さんは、神楽坂に本屋がなくなる寂しさから、この街に愛される本屋をつくろうと「かもめブックス」をその年の11 月オープンさせた。店内は明るい南向き。扉の先には京都の自家焙煎専門店〝WEEKENDERS COFFEE〟の豆を使ったおしゃれなカフェスペースが広がる。3 週間ごとに変わる〝特集棚〟や、本棚は「日々の暮らしのこと」「こどものいる毎日」というように分かりやすい見出しで分類されている。「酔いどれの文体」の棚で、本欄執筆の太田和彦さんの『ニッポンぶらり旅 山の宿のひとり酒』を発見。山口瞳の『酒呑みの自己弁護』、草野心平の『酒味酒菜』なども。文房具の棚や、2 週間ごとに変わるギャラリー、マンガのコーナーもある。「食や生活に興味のある文化度の高い人たちに愛される街、神楽坂に飽きられない本屋をずっとつづけていきます」とは柳下店長。定期的にツドイ文庫といった古本市などのイベントも開催している。
〔住〕新宿区矢来町1-2-3 第一矢来ビル1 階〔問〕03-5228-5490
山陽堂書店
表参道と青山通りの交差点に、長年谷内六郎の壁画で親しまれてきた「山陽堂書店」はある。1891 年(明治24)から続く老舗だ。岡山の商家で生まれた初代が芝や京橋で新聞販売業に従事し、その後23 歳のときに青山の地で創業、爾来家族経営がつづいている。直系5 代目となる萬納嶺さんが大学生だった2010 年、売上が伸びずため息ばかりついていた家族に企画書を提出し、家族会議を経て2 階、 3 階をギャラリーに改装することを決めた。コンセプトは、「わ」と「話」と「和」と「輪」。「山陽堂書店は、多くの人たちの〝わ〟を生み出せる場になろう」というものだった。しかし運営のノウハウもなく、空間をつくるだけでは立ち行かないと難航していた時、嶺さんを幼い頃から知る編集者が今は亡きイラストレーターの安西水丸さんを紹介してくれた。安西さんは「ギャラリーは大変ですよ」と言いながらも、自身の個展を毎年開催、またプロのイラストレーターになるための教室〝山陽堂イラストレーターズ・スタジオ〟を始めてくれたという。「山陽堂書店が好き」という嶺さんは、3 階喫茶スペースでマスターになったり、近隣に雑誌の配達をしたり忙しい。10 月には、明治元年生まれの初代を偲び、「生誕150 年展」が予定されている。
〔住〕港区北青山3-5-22 〔問〕03-3401-1309