激動の20世紀、80年にわたって暴力、戦争、貧困に耐えなければならなかったアンドレアス・エッガーの孤独な苦悩の人生が描かれる。しかし、そんな名もなき男の人生の中にも幸福な瞬間と愛があり、彼は運命を受け入れ無骨に生き抜いた。
ローベルト・ゼーターラーの『ある一生』は、世界40か国以上で翻訳され160万部以上を発行、イギリスの文学賞で世界的に権威のある文学賞の一つであるブッカー賞の最終候補にもなった作品である。
1900年頃のオーストリア・アルプス。孤児のアンドレス・エッガーは、渓谷に住む遠い親戚の農場にやってきた。しかし、農家の他の子供たちとは一緒のテーブルに座ることも許されず虐げられる毎日だった。そんな彼に老婆だけが優しくしてくれた。けれども老婆が亡くなり、成長したエッガーは農場を出て日雇い労働者として生計をたてることに。その後、渓谷に電気と観光客をもたらすロープウェーの建設作業員になり最愛の女性マリーとも出会う。そして山奥の木造小屋で結婚生活を始めるが、その幸せも長くは続かなかった。やがて第二次世界大戦が勃発し、エッガーも召集されたものの、ソ連の捕虜になってしまう。何年も経って谷に戻ることができたが……。
幼少期を新人のイヴァン・グスタフィク、青年期をやはり新人のシュテファン・ゴルスキー、老齢期をアウグスト・ツィルナーと3人の俳優が確実に説得力のある演技でエッガーを演じる。
監督は、『ヒランクル』(03)、『アンネの日記』(16)のハンス・シュタインヒッヒラー、脚本は、『マーサの幸せレシピ』(01)のウルリッヒ・リマー。「幸せな一生とは何か」と考えずにいられない。
『ある一生』
7月12日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
配給:アット エンタテインメント
©2023 EPO Film Wien/ TOBIS Filmproduktion München