おそらく「鎌倉市川喜多映画記念館」でなくては発想できない映画ファン垂涎の〈特別展〉だろう。昭和の巨匠二人、小津安二郎と市川崑を〈デザイン〉という視点から検証するというもので、ほぼ3カ月にわたり代表作品の鑑賞もできる。
戦前のサイレント期にその才能を開花させ、戦後は日本を代表する巨匠として一貫した主題を紡いた小津安二郎と、1930年代からアニメーターとしてキャリアを開始し、時代の変化や技術の進歩に呼応しながら多様なジャンルの作品を手がけた市川崑。鋭い美的感覚を持ち合わせ、デザイン性に富んだ作品を生み出した彼らは、実はスタイルの近い映画作家といえるのではないだろうか。
本展では、同時代に活躍しながらも、これまで一緒に語られることの少なかった小津と市川、2人が生きた時代や背景、画面を構成する様々な要素など、〈デザイン〉の視点から検証する。2023年に生誕120年を迎える小津安二郎と、デジタル修復された『犬神家の一族』が大きな話題を呼んだ市川崑、二人の映画作家の多彩な魅力が楽しめるに違いない。
市川崑の上映作品
70数年もの長き映画人生において、複数の映画会社で、洗練された喜劇から重厚な文芸映画、ドキュメンタリーまで多彩なジャンルを手がけた市川崑監督。彼の作品には、人間が織りなす物語への客観的な眼差しと愛情、そしてこだわりぬいた画面作りへの情熱が共存している。
『ビルマの竪琴』『太平洋ひとりぼっち』『東京オリンピック』『細雪』『犬神家の一族』『愛人』『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』
小津安二郎の上映作品
小津映画を特徴づけるものとして、一貫した主題とともに重要なのが画面の構図。カメラの動きやアングル、俳優の身振り、色や衣裳へのこだわりといった様々な要素で構成される小津映画は、極めてデザイン的だと言える。
『晩春』『生きてはみたけれど 小津安二郎伝』『淑女は何を忘れたか』『彼岸花』『お早よう』
特別上映『細雪』と映画研究家/書籍編集者の森遊机さんのトークイベント 10/15(土)、澤登翠のかまくら活弁&トーク 11/19(土)、特別上映『お早よう』とグラフィックデザイナー/映画評論家の鈴木一誌さんのトークイベント 12/3(土)が予定されている。
特別展「映画をデザインする 小津安二郎と市川崑」
会期:2022年9月17日(土)~12月12日(月)
会場:鎌倉市川喜多映画記念館
トークイベントと特別上映会や、チケットの取り扱い問い合わせ先は、0467-23-2500まで。
HP:https://kamakura-kawakita.org/